迎えにきた強面消防士は双子とママに溺愛がダダ漏れです
「いらっしゃいませ」

 声掛けをしてお客さまの様子をうかがう。最初に並んでいたらしい老夫婦の接客にパートスタッフが入ったので、私は残りの二組に目を向けた。

 子どもたちは瞳をキラキラ輝かせて何を選ぼうか真剣に悩んでおり、まだ時間がかかりそうだ。

 男性はどうするだろうかと視線を移すと、子どもと女性の動向をうかがいながら遠慮がちにこちらへ近づいた。

 百六十三センチある私がしっかりと見上げる形になるので、おそらく百八十センチはあるだろうか。健康的に焼けた肌は意外にも艶やかで、まっすぐに伸びた鼻梁と、少しつり上がった切れ長の二重はぱっと目を引くほど綺麗だ。

 薄い唇はクールな印象があり、ダークアッシュに染めた短髪と合わせて落ち着いた雰囲気が漂っている。

 端正な顔立ちについ見惚れていると、ショウウィンドウを見つめたまま男性は「すみません」と口を開いた。

「モンブランと、シャインマスカットのショートケーキと、オペラをひとつずつください」

 威圧感を与える見た目に反して物腰が柔らかだ。声は低すぎず高すぎず、聞き心地がいい。
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