迎えにきた強面消防士は双子とママに溺愛がダダ漏れです
 目を覚ましたのは要請がかかった早朝の五時台だった。高速道路内で事故車両から油の流出があり、処理に向かって署に再び戻ってきた頃には朝日が昇っていた。

 ちょうど起床時刻の六時半になっていたので、出動信号のテストを行い、掃除、車両と車庫の点検をする。そうこうしているうちに八時半になり、今日の勤務につく隊員に連絡事項を伝えて勤務を終えた。

 ロッカールームで着替えている俺の隣で、佐橋は相変わらず大きな欠伸をしている。

「ダメです、橙吾さん」

「なにが」

 唐突に呻くような弱音を吐いた佐橋に呆気に取られる。

「眠すぎて、ポワッタビジューに行けなさそうです」

「いいんじゃないか、また今度で」

 療養中にだいぶ増量したみたいだし、むしろ甘いものは控えて身体を引き締めた方がいいはずだ。

 淡々と返すと、佐橋は眉間にぐっと皺を寄せた。

「俺が連れ出さなきゃ、橙吾さん、あの子に会いに行かないじゃないですか」

「子どもじゃないんだから、ひとりでも行ける」

 きっぱりと言い切っても疑わしい視線を注いでくるものだから、小さく息をついた。

「帰って少し仮眠を取るだろう? 昼過ぎにケーキ持って行くから、起きていろよ」

「さすが橙吾さん。待ってますね」

 調子がいいやつだ。

 呆れてそれ以上なにも言えずにいる俺の横で、佐橋は機嫌よさそうに口笛を吹いていた。
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