イケメン警視、アルバイトで雇った恋人役を溺愛する。

「それで、さ」


 と、次は琳が会話を切り出した。彼女の向ける視線は私の顔ではなく……私の左腕の手首。


「その腕時計、瑠奈持ってなかったよね? 貰ったの?」


 私はお金がない事を知っていたから、そう聞いてきたのだろう。確かに私はお金がないからこんな時計を買えるわけがない。だってこれ、男性物の高そうな時計なんだもん。

 彼女の言う貰ったもの、は正解だけど少し違う。


「これ、支給品なの」

「……支給品? 何の?」

「新しいアルバイトの支給品」


 そして、お見合いで提案されたアルバイトの内容と、それを受けるきっかけも全て包み隠さず彼女に説明した。


「……マジ?」

「相手は警察官だし、凄い金額だし。別に大丈夫でしょ」

「あ、うん、まぁ……自分で闇バイトには気を付けろって言ってたみたいだし……でも、他の警察官に会う事にもなるんでしょ? 大丈夫なの?」

「大丈夫大丈夫、借金払えれば」

「……あえて聞かなかったけど、一体いくらよ、その借金」

「2500万」


 社長令嬢である琳としてはそんなに大金ではないだろうけれど、貧乏な私からすると、これはまごうことなく大金である。


「……まぁ、足しにはなるだろうけれど……私、貸そうか?」


 彼女のその言葉を聞いた瞬間、私は動きを止めた。そして、琳を見つめる。その視線で、彼女は顔を強張らせた。私が言いたいことを、理解したらしい。


「……私がそれ嫌いなの、知ってるでしょ」

「でも、私に返してくれればいいだけだし……」

「もう言わないで」

「……」


 私は、琳にお金を貸してもらったりするのが嫌いだ。

 私がお金の為に琳と友達になった、と思われたくないから。そして、自分も思いたくないから。

 私達は、それは抜きで友達になった。そもそも、最初は知らなかったし。だから、お金持ちの琳にたかるため、お金を貸してもらうために付き合ってる、そう思われてしまうのは絶対に嫌だ。

 まぁ、アルバイトの件は、彼女が困っていたからギリギリセーフだと思うけれど。
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