イケメン警視、アルバイトで雇った恋人役を溺愛する。

 そして、とあるホテル前。これはバイトの支給品よ、と高い服を買っていただき身に付けた。流石お金持ちのご令嬢だ。しかも、行き帰りのタクシー代まで。なんとも待遇の良いバイトである。


「う、わぁ……」


 けれど、辿り着いたホテルに圧倒されている。なんだこのキラキラしたホテルは。大きすぎる。一体何階建てなんだ。こんな所に来たことなんて全くないから、このホテルに入ってもいいのだろうかと尻込みしてしまう。

 けれどこれは仕事だ。50万が待っているのだからちゃんとやらなきゃ。内心ドキドキしつつもそう言い聞かせて背筋を伸ばしホテルに入った。

 私の行き先は、このホテルの最上階にあるホテルレストラン。何階もあるホテルのエレベーターに乗り込み、最上階のボタンを押しドアを閉めた。

 スマホを取り出し時間を見れば、約束の7分前だと確認出来た。5分前に着ければいいやと思っていたから、ちょうどいい時間だ。

 相手はもう来ているだろうか。確か、相手は警察官。警視という階級を持つエリート警察官らしい。出世間違いなしのエリート警視、と言ったところか。

 琳によると、パパは警察との繋がりが欲しいんじゃない? とかるーく言っていたけれど……これは断っていいのだろうかとも思う。

 とはいえ、私の仕事はお見合いを断る事。初めての事ではあるけれど、断ってご飯を食べて帰れば50万が手に入る。そう、50万。

 50万が手に入れば、まずは溜まっていた支払いに充てて……と考えているうちに最上階に辿り着き音が鳴った。エレベーターのドアが開くと、ホテルのエントランスとはまた違った景色が広がっていた。

 高級レストラン。まさに、それだ。
< 5 / 83 >

この作品をシェア

pagetop