イケメン警視、アルバイトで雇った恋人役を溺愛する。

「で? 報告」

「……」


 そう言いつつ、後ろから顔を覗いてきた湊さんに、私は視線を向けられなかった。

 どこまで、言えばいいんだろう。だって、早瀬さんは湊さんの婚約者かもしれないわけだし……でもそうだとしたら今までの湊さんの行動はおかしいわけだし……

 でも、私はただのアルバイト。そこまで頭を突っ込むわけにはいかない。


「どうせ、早瀬の一人芝居だったんだろ。巻き込んで悪かったな」

「……え?」


 早瀬さんの、一人芝居……?

 今、湊さん、そう言ったの……?


「別にこれは今日だけじゃないしな。アイツ、気付かないとでも思ってるんだろうな。あっちも警察だってのに、舐められたもんだな」

「……」

「で?」

「……写真、見ました?」

「あぁ、あの男女の写真か。お金に追い詰められてるお前がそんな事する度胸なんてないだろ」

「……」


 なるほど、確かにそうだ。さすが警察官。

 けれど、さ……あの、近いのですが。

 恐る恐るではあったけれど、事の次第を私の雇用主にお伝えさせていただいた。でも……婚約者だというところは、言わなかった。……聞けなかった。


「じゃあ、あの写真に映ってたもう一人は女性なんだな?」

「は、はい、メンズライクに、ハマってる、女性です……」


 先輩との他のツーショット写真も見せれば、信じてもらえた様子を見せてきた。よ、よかった……

 途中から呆れたような表情を浮かべていたから、うんざりしているのだろうなと同情心まで生まれてしまった。

 うん、お疲れ様です。



 けれど、私は知らなかった。トイレに行った湊さんが……


「……はぁ、マジあせった……」


 そう呟き廊下でしゃがみ込んでいた事を。
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