イケメン警視、アルバイトで雇った恋人役を溺愛する。
少しずつ浮上してくる意識を感じ、少しずつ重たい瞼を開いた。
おかしいな、こんなにふかふかな布団は初めてだ。枕の高さもいつもと違うような気がする。
ようやく目が使いものになったと思った次の瞬間、目を疑った。目の前に、眠っている湊さんがいたからだ。
約十秒、頭の機能が停止した。そして、一言。
「……やっちまった……?」
とりあえず、服は乱れてない、大丈夫。……いや、大丈夫ではないんだが。
けれど、私の一言で起こしてしまったらしい。湊さんの目が開いた。
「おはよう」
「お……はよ、う、ございます……」
いや、呑気に朝の挨拶をしている場合じゃないのでは?
すぐに理解した。これ、湊さんの家のベッドだ。そして、一緒に寝てしまっていて、何故だかぎゅっと抱きしめられている。
「……やらかしました?」
「やらかすようなほどではないから安心しろ。頭、痛いか」
「……いえ、正常です」
「そうか」
いや、正常なのかどうかは疑ってしまいそうだけど。でも、何故こんな事になってしまっているのだろうか。昨日、同僚の皆さんと食事をして、お酒飲んで、あと早瀬さん……の、あとは?
……私、寝落ちした?
「……あの、すみませんでした……」
「別にいい。話は聞いた。あれは広山が悪い」
「……」
それは……海さんから貰った焼酎の事? 私は何と返せばいいのだろうか。アルコール臭で気付けなかった私が悪いのでは?
でも、ちょっと待って。
早瀬さんが言ってた婚約者って……嘘?
それに昨日、湊さんは寝室に入られるとガチギレするって聞いたような気がする。けれど、私ベッドにいません? しかも、本人と一緒に。抱きしめられてるし。
見たところ、湊さんは怒ってない様子だし。
……どゆこと?
さてと、と身を起こした湊さん。すると、何かに気が付いたような素振りをし、私に顔を近づけてきた。耳元で囁いてきて……
「手は出してないから安心しろ」
「……」
時間が止まったかのように、固まった。そんな様子を見てクスクス笑いつつもベッドから出ていた。
「ここで着替えていいか?」
「……」
そう言って、着ていたTシャツの裾を少しめくって見せてきた。
その言葉と、チラッと見えたお腹で、ぶわっと顔が熱くなり火照ってしまった。今、何と言った? ここで着替えるですって……!?
面白がっているのか、冗談だと笑って出ていった。
「……心臓、やば」
しばらくは、顔の火照りと心臓が収まらなかった。布団から湊さんの匂いがするから余計だ。……私は断じて変態ではない。