イケメン警視、アルバイトで雇った恋人役を溺愛する。
最近、冗談が過ぎる気がする。あの人って結構冗談言う人だったんだ、というよりもこのままじゃ心臓がもたない。あの人は顔が整ってるから余計だ。
アルバイトはあと残り1ヶ月。けれど、終了まで私が無事でいられる事を祈っていたほうがいい気がする。あとは、やらかさないようにも気をつけなきゃ。早瀬さんの事もあるし……もう少し気をつけなきゃ。
でも……婚約者じゃなかっとことに嬉しさが込み上げてくる。そんなことあっちゃいけないのに。私はあくまでアルバイト。そう、アルバイト。そこは間違っちゃいけない。
それにしても……他人の家にお泊まりだなんて、これまで学生の時に何回かくらいだった。それに、昨日の事もあってだいぶ緊張してしまう。
「飯食ってくだろ。味噌汁、飲むか?」
「あっ、ありがとうございます、いただきます……」
けれどまさかここで、二日酔いに効くお味噌汁をいただけるとは思わなかった。二日酔いとまではいっていないけれど、ありがたい。
「今日は仕事だから朝飯食ったら家に送ってやる」
「あ、いえ、自分で帰れますので……」
その時だった。朝ご飯を持ってきた湊さんの手が、私の頭に乗った。
「別に気にするな」
ポンポン、と優しく叩かれ、キッチンに戻っていく湊さんの背中を見る事しか出来ず、絶句してしまった。
そして、顔が一気に熱くなる。もうまっかっかで耳まで赤くなってる、と思うけれど……さっきの事も重なって、全く目が合わせられない。さっきのTシャツからいきなり仕事姿にチェンジしているから、というのも新鮮すぎて……
ちらりとお腹を見てしまって、警察官さんなんだから腹筋バキバキなんだろうなぁ、と思ってしまいそうになったけれど、アホかそんな事考えるなと自分に言い聞かせた。
……全く、なんて事してくれてるんだこの雇用主は。
それよりも、とっても美味しい朝ご飯に集中しよう。お邪魔する機会はもうないかもしれないから、食べられるのはもしかしたら今日で最後かもしれない。
寂しい気がするのは、それだけ湊さんに胃袋を掴まれてしまっているという事だろうか。役得ではあったけれど……残念でもある。
とにかく、美味しそうな朝ご飯は味わって食べよう。いただきます。