イケメン警視、アルバイトで雇った恋人役を溺愛する。
今日もまた、湊さんは私の住むアパート前までに迎えに来てくれた。
「こんばんは、お疲れ様です」
「あぁ、おつかれ」
仕事終わりなのかスーツ姿だ。やっぱり、仕事が忙しいらしい。
けれど、久しぶり、とはならないけれど1週間ぶりの湊さんに何となく緊張してしまう。助手席を開けてくれたりといういつもしてくれる気遣いにドキドキしてしまう。今までそんな事はなかったのに。
何事もなかったかのように、平然とした様子で車に乗り込んだけれど……ずっと心臓が煩かった。
ディナーデート、としか言われてなかったから行き先は知らなかった。もう暗い時間帯だったから、道路を見ても分からず、湊さんの話に耳を傾けいた。
道路から駐車場に入ったようで、また外を見ると……近くに建物が見えた。ここは一体どこだろう。
そして、今日のディナーデートは……
「ここ、ですか……」
「あぁ。好きなものを選んでいいぞ」
お寿司屋さん、だった。個室に案内されたんだけど、だいぶ高級感があって、メニューにも驚いてしまった。こんなにするんだ、と。一応このアルバイトは食事付きではあるけれど、いいのだろうか。
とはいえ、今までも高いレストランに数回連れていってもらった。今更、ではある。
「さび抜きか」
「……はい」
私が辛いものが苦手だという事を、ちゃんと覚えていてくれた。一応彼氏役だから当たり前の事なのに、嬉しく思ってしまうのはどうしてだろうか。
「で? 決められないなら特上いくか」
「えっ」
湊さんと同じく、人気らしいメニューとなった。値段は、見ないことにした。
こんなに凄いお寿司屋さんなんて初めてだから本当に緊張してしまう。お寿司なんて、コンビニやスーパーのパックに入ったものか、店内で回るものしか知らないのだから当たり前だ。
「今日も飲みに誘われたんですか?」
「いや?」
「えっ?」
「ただ瑠奈と寿司を食いたくなったから」
それに会えてなかったしな、と続けた。
けれど、これって契約に入ってたっけ。彼女役として必要な事なのだろうか。あ、でも、この前彼女と寿司行った、とは言えるか。
そう自分で納得することにした。