イケメン警視、アルバイトで雇った恋人役を溺愛する。

5.それは、冗談ですか?


 着実に近づいてくる、アルバイト期間終了日。それと同時に、私の疲労感は増えていった。いや、疲労感、というよりは……


「ねぇ瑠奈、アンタ大丈夫?」

「……大丈夫じゃ、ない」

「もしかしなくても彼氏でしょ」


 何故分かった。

 あれから一度も会っていないのだが、電話やメッセージが来るたびに反応してしまう。意識している、とはこの事を言うのだろう。

 だって、誰かを家の泊めるのも嫌で、ベッドを使われるのは生理的に無理だと言っていたくせに、泊まっていいと言ってくるし、更には二人で仲良くベッドときた。

 さすがにこれは冗談では片づけられない。

 お泊まりだって、同僚さん達の目の前だったからその手を使ったのだろうけれど、帰った後で叩き起こして送ればいいだけの事だ。もし起きなかったら、仕方ないけれどソファーに転がせておけばいい。それなのに、しなかった。

 どういう事なんだ、と聞きたいところではあるけれど、あいにくと聞く度胸なんてものを私は持ち合わせていない。さて、どうしたものか。

 ……と、悩み続けてこうなっているわけだ。

 そして、その矢先にこのメッセージ。


『ディナーデート、行くぞ』


 こんなメッセージをいきなり送られてくれば、今の私の心情を見れば驚き、焦りを感じるに決まってる。だって、会うのは1週間ぶりなのだから。

 けれど、それと同時に不安も出てくる。私はしょせんアルバイト。仕事に市場を持ってきては、ちゃんと仕事が出来ない。ここまで何事もなく来れたのに、今更何かをやらかせば契約違反となってしまう。それは絶対にダメだ。

 これは、絶対に知られないように。

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