イケメン警視、アルバイトで雇った恋人役を溺愛する。

 湊さんと出会って、もうそろそろで3ヶ月。アルバイト期間がもうそろそろで終了する。

 これまで、湊さんの同僚さん達とたびたび会い、全力で勤めたけれど……心残りがある。私はずっと、ずっとあの人達に嘘を吐いていた。すごく仲良くしてくださっていた人達に。

 これは湊さんに依頼されて恋人役を務めたに過ぎないけれど、それでも罪悪感がある。

 それと同時に、私に電話やメッセージを送ってくれる湊さんへの気持ちが変わりつつある事も気付いている。

 それが、どう変わっているのかは自分で分かってる。だから、アルバイトに支障をきたす事はしないように平然を装っている。もうそろそろで終わりなのだから、それまで頑張らなきゃ。

 ……そう思っていた矢先に、これだ。


「39度9分。完全に風邪ね。はぁ、こんな事だろうと思った。正直に言いなって。全く、頑固者はこれだから……」

「……」


 まさか、風邪をこじらせるとは……やらかした。

 朝、ベッドから出られず大学に行けなかったから、琳が心配して来てくれたけれど……申し訳ない。一応マスクをするよう言ってしてもらってるけど、移したら大変だよね。でも、帰ってって言っても流すからなぁ……


「病院の診察券とかってどこにある? 病院行くべきよね」

「いい……だいじょーぶ……」

「こんなに熱あるのに? いいよ、いつもお世話になってるから病院代は私出す」

「だいじょーぶ……!」

「あーはいはい、分かった分かった。はぁ、本当に頑固者ね……なら風邪薬は? どこにあるの?」


 39度の風邪なんて病院に行かずとも寝ていれば治る。いや、気合いで治す、けど……今日、アルバイトあるんだよなぁ……完全にやらかした。

 琳が持ってきてくれたゼリーを食べて、風邪薬を飲んだけれど……約束の16時に間に合わない、よね……


「ほら、薬飲んだらさっさと寝る!」

「……鍵」

「そんなの気にしない気にしない! 病人は寝る事が仕事よ、私に構ってないで目つぶって」

「……」

「はいおやすみ」


 強引に布団を頭まで被せてきて、仕方なく少し顔を出して目を閉じた。

 ……そうだ、湊さんに連絡した方が……

 そう思っていたけれど、徐々に意識が落ちていった。

 何となく、私のスマホの着信音が聞こえてきたような……
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