イケメン警視、アルバイトで雇った恋人役を溺愛する。

 離婚してから、父親の事は一切聞かなかった。再婚していた、という事? もう家庭を築いていたという事になる。

 さっき早瀬さんは、パパにあんな口をきいてと言っていた。という事は、この前のひったくり事件で事情聴取した早瀬警視長はやっぱり早瀬さんの父親。あの方は私に2500万で引いてくれと言っていたから、やっぱり私を調べて借金の事も知っていた。そして……私の家族の事も。


「貴方の父親は、今会社の社長をしているらしいわよ。息子がいるらしくて、今7歳ですって」

「……えっ」


 7歳、ですって……?

 母親が離婚したのが、8年前。という事は……離婚してすぐ、父親は子供を作っていた事になる。という事は、もうそれ以前からその母親と浮気をしていた事にもなる。そんな話、二人の間にはなかった。母の浮気が発覚して、そのせいで離婚したんじゃ、なかったの……?


「本当に醜い家族よねぇ。父親は別の女と子供を作り、母親も浮気をしては最後に娘に借金を押し付け蒸発だなんて……そして、その娘は人のものを取る女狐。あんたは、湊君といる資格なんて全くないのよ」

「っ……」

「そうそう、貴方の大学のお友達。清水琳ちゃん、だっけ」

「っ!?」

「社長令嬢なんでしょ? お金持ちにたかるのは得意って?」


 やっぱり……私の近辺調査は全部済んでるのね。さすが警察官? パパって言ってたけど、警視長がお父上なら簡単なのかな。

 でも、琳には手を出さないでほしい。


「誰に言っちゃおうかな~。じゃあ、湊君にでも言っちゃおうか」

「……」


 まるで、私を煽るような態度だ。


「あぁ、でももうフラれちゃった? どうなの?」


 フラれた、というわけではないけれど、もう私は彼の彼女ではない。そもそも彼女ではなく彼女役ではあったけれど、契約期間はもう終わったのだから赤の他人。

 でも、もし彼がこれを知ったら……きっと、軽蔑すると思う。借金がある事は、彼は知ってる。けれど、父親も母親もろくでなしだというところは知らない。

 彼は、実家では料理をお袋に手伝わされていたと言っていた。彼の性格から見ても、あんなに優しい人なんだからきっと素敵な家庭なんだと思う。なら、こんなに泥まみれな家庭を知って彼はどう思うだろうか。

 きっと、今までのような優しい目は向けてもらえないと思う。

 ……でも、それはもう関係ない。だって、恋人役は終わったのだから。


「そう、ですね……きっといい目では見てもらえないと思います」

「へぇ、認めるのね。なら、自分がどうすればいいのか、わか……」

「で?」


 私は立ち上がり、早瀬さんに視線を向けた。
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