幽霊姫は止まれない!
 妖精だなんて的確な表現の出来る貴族が隣国にいるはずないのである。

「危険です!」
 思わず声を荒げるが、父は首を左右に小さく振った。
「それはエヴァも重々承知だろう。だからこそ必ずオスキャルを側に置き、危険なことはしないと約束してくれた」
「ですが」
「これがエヴァの意思だ。そこを覆すつもりはない。それにソードマスターであるオスキャルが側にいるのならば問題はないだろう」
 そう断言する父に歯噛みする。
 刺客という意味であれば、オスキャル以上の護衛はいないだろう。
 ソードマスターという資格を最年少で獲得した彼の才能は本物で、最も将来を有望視されている騎士だ。ゆくゆくは騎士団長としてすべての騎士の上に立つ。
 だがアイツはダメだ、危険だ。だってどう考えてもエヴァに惚れている。
 あいつはスカしたフリしてエヴァを見る目が怪しい。当たり前だろう我が妹は妖精姫だからな。うむ。今後はこっちの名前で広めよう。いやダメだ、幽霊なんて不名誉だが可愛いエヴァに変な虫がついてはかなわん。オスキャルみたいな、な。

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