幽霊姫は止まれない!
そしてそれは次期当主でもなんでもない、伯爵家出身というだけの騎士の自分と、王女である彼女にも当然当てはまること。
もちろん今回は潜入という観点から突然恋人という設定になったが、それはあくまでも偽の関係だとわかっている。
だけど、彼女を守るように後ろに立つでもなく、彼女を庇うために前へ立つのでもなく。ただ彼女の隣に立つことを許されたからだろうか。
(いつの間にか、欲を出していたのか。俺は)
そんな気付きたくない奥底へ隠していた気持ちを無理やり剣で刺されたように、その当たり前が何故か痛かった。
別に彼の貴族としての考えが事実だったからじゃない。その決意を、エヴァも持っていると知っていたから──
思わず俯いた俺の動揺なんて気付きもしないのか、突然ハハッと明るく笑ったミック公爵令息が、視線を俺から彼女たちへと戻す。
「ほら、レディたちの戯れが終わったみたいだよ」
そんな彼に倣い俺もエヴァ様たちの方を見ると、気付けば何枚ものパネルを椅子の横に立てかけて唸り合っている。
そんな、エヴァ様らしい〝当たり前〟に、どうしてか俺は心の底からホッと安堵のため息を溢したのだった。
もちろん今回は潜入という観点から突然恋人という設定になったが、それはあくまでも偽の関係だとわかっている。
だけど、彼女を守るように後ろに立つでもなく、彼女を庇うために前へ立つのでもなく。ただ彼女の隣に立つことを許されたからだろうか。
(いつの間にか、欲を出していたのか。俺は)
そんな気付きたくない奥底へ隠していた気持ちを無理やり剣で刺されたように、その当たり前が何故か痛かった。
別に彼の貴族としての考えが事実だったからじゃない。その決意を、エヴァも持っていると知っていたから──
思わず俯いた俺の動揺なんて気付きもしないのか、突然ハハッと明るく笑ったミック公爵令息が、視線を俺から彼女たちへと戻す。
「ほら、レディたちの戯れが終わったみたいだよ」
そんな彼に倣い俺もエヴァ様たちの方を見ると、気付けば何枚ものパネルを椅子の横に立てかけて唸り合っている。
そんな、エヴァ様らしい〝当たり前〟に、どうしてか俺は心の底からホッと安堵のため息を溢したのだった。