幽霊姫は止まれない!
(訓練しかしてこなかったただの騎士にどこまでできるかはわからないが)
 それでも彼女を守るためなら、どんなことにでも対応してみせる。気合を新たにした俺は、ミック公爵令息へとしっかり向き直った。

「ま、気持ちはわかるけどね」
「は? まさかエヴァ様に求婚しておきながらエヴァ様によそ見をしようとでもいうのか?」
「怖い顔しないでよ。あとエヴァ様が溢れかえってるけど後半はエヴァリンのことであってる? それならボクが彼女に手を出すことはないよ、だって身分が違うからね。君だってそうだろう?」
「身分なんて、そんなの俺は」
「君がよくても世間が許さないよ。まぁソードマスターの権力で押し通せるのかもしれないけど、ボクには無理かな。ボクは公爵家次期当主として、この身分にあった令嬢を選ぶ義務があるからね」
 気合を入れた俺にあっさりと告げられる当たり前の言葉。その言葉に何故かズキリと胸が痛む。
 公爵令息の彼が、どれだけ魅力的だろうと平民とは結婚しないのは当然と言えば当然のことだった。
(貴族と平民なんだから当たり前だろ)
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