幽霊姫は止まれない!
(私に薬を飲ませるなんて!)
 私を優先し、私を助けるために薬を飲ませたことは護衛騎士として正解だったのかもしれない。

 王族の代わりはいないが、護衛の代わりはいくらでもいるからだ。
 でも、オスキャルはひとりしかいないのに!

 私は腹の底から涌き出る言葉に言い表せない怒りのままオスキャルの襟首を掴む。
 そして自らの方へ思い切り引き寄せた。突然の私の行動に流石のソードマスターでも対処できなかったのか、それとも彼にも病の症状が出ているからか、倒れこんだオスキャルに馬乗りになる。

「──んっ」
 そして無理やりオスキャルの唇と自身の唇を合わせ、僅かに開いた隙間から口内に残っていた薬を流し込む。
 単純な力比べでは敵わないが、護衛という立場上私を押し退けることはできないと知っているからこその行動だ。

 残っていた薬を流し込んだ後も重ねた唇は離さなかった。薬を返されたら困るからだ。
 暫くし、やっとオスキャルの喉がこくりと動いたのを見て彼を解放する。

「何を考えてるのよ!」
「そっ、それはエヴァ様の方では!?」
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