幽霊姫は止まれない!
「はぁ!? どう考えてもオスキャルでしょ! 万が一ここでオスキャルが倒れれば、その後私たちだけでどうすればいいっての!?」
「うっ」
 エルフが悪意を持って攻撃をしてくるとは思わないが、逆上したり不可抗力なんてこともある。
 先ほど瓶が落ちて割れたように。

「あ、あ……」
 驚き、戸惑いながら呻き声をあげるのはエルフだ。
 きっとこんなことをするつもりではなかったのだろう。しゃがみこんだまま動かない。

 結局小瓶の半分ずつの薬を分け合った私たちだが、半分でどこまで効果があるのかはわからない。
 だが目眩が治まったので、多少なりとも効果はあるのだろう。再び悪化する前に、と私は動揺するエルフの前へと歩きだした。
 そして呻きながら頭を抱えているエルフへと手を差し出した。

「私にも悼ませて欲しいの。〝彼女〟の話を聞かせてくれないかしら」
「悼ませて……?」
「だって私、まだ貴方の大切な人のこと、何も知らないもの」
 私の言葉が響くかはわからない。むしろお前らのせいで、と罵られるかもしれない。
(でも、これが私の正直な気持ちだもの)

 そしてその言葉がどうやら少しは伝わったのだろうか。
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