幽霊姫は止まれない!

第八十五話 望まなかった変化と、唐突な答え

「何ひとりでブツブツ言っているのよ」
「うわっ、エ、エヴァ様!?」
 絶対に開かないと思って油断していた俺の目の前で、当然のように開いた扉に驚き思わず声をあげてしまう。

 普段ならノックした後、彼女の逃走経路を追いかけているはずなのに、今日のエヴァ様は逃げるどころか、なんとちゃんと身なりを整えていたのだ。

「何よ」
「い、いえ。えーっと、今侍医を呼びますのでお待ちください」
「なんでよ!?」
 俺の発言に目を吊り上げるが、そりゃそうだろう。彼女の護衛騎士に任命されて三年、こんなこと一度もなかった。

(絶対熱だ)
 そうか禄でもないことを考えているはず。

 そう思い、彼女の額へと手を伸ばす。俺の手のひらは熱を測ろうとして触れる瞬間のことだった。

 ──パシン、と乾いた音が響き、思わずフリーズしてしまう。
 エヴァ様に手を払われたのだ。

 この程度、決して痛くない。痛くないはずなのに、どうしてかやたらとヒリヒリと痛い。

「え?」
「あ」
 俺の手を払ったエヴァ様も驚いた顔をしている。

(いや、これって当然の反応だよな)
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