幽霊姫は止まれない!
 戸惑った彼女の顔を見てハッとした。そもそも今までこの距離感が許されていたのは彼女が受け入れていたからであり、本来ただの護衛騎士が主人に触れるには許可がいる。
 何も声を掛けず、突然手を伸ばされれば驚くのも、払われるのも当然だ。

 そう思い、慌てて俺が一歩下がって頭をさげる。

「出すぎた真似をいたしました」
「い、いえ。いいの、ちょっと驚いただけっていうか」
 歯切れの悪い彼女にズキリと胸が痛い。心当たりはひとつだけ、俺たちの気持ちが暴露されたあとだからだ。

(想いを、告げるだけ)
 告げて何が変わるわけではないと思ったけれど、もし告げればもっと距離感が変わるのだろうか。一瞬そんな不安が胸を過る。だが、既に俺の気持ちが勝手に暴露されている状態だ。それに俺の想いを知ってこの反応をされているならば、どうせ振られるとわかっていても俺の口で言いたいと思うのはおかしなことではないはず。

 本来ならば許されないとわかっていても、先日のアルフォードとの会話の件も俺を後押しし、俺が口を開こうとした、その時だった。

「今日の護衛はいらないわ」
「……え」
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