幽霊姫は止まれない!
 でも、どんな態度でも、どれだけ自分の都合で振り回しても彼はいつもそばにいて見守ってくれていた。
 無茶も無理も無謀も全て言ったし押し付けてきたのに、それでもずっと側にいて命すらかけてくれるのだ。

 幼い時の約束を大事に守り、私自身も大事にしてくれる。そんな相手を好きになるななんて、到底不可能。

 それでも完璧に隠せているはずで、そのまま去るつもりだったのに。

(まさか言語化されてしまうなんて)
 しかも愛を唄うエルフの言葉だ。それが真実だと知られ、そして私自身が自覚させられてしまってはもう逃げられない。

 いつか私を忘れ、誰かと幸せな家庭を築く権利のある彼の幸せを、私は自分のわがままでいつまでも縛るわけにはいかないのだから。

「だから、これでいいのよ」
 オスキャルが私の世界からいなくなったけれど、オスキャルが幸せになるには私以上に邪魔存在はいないのだ。

 じわりと視界が滲み、その事実を隠すように枕に涙を吸わせる。
 始まる前からわかっていた結末。それを今自分で終わりを突きつけただけだ。

 ここで泣くなんて、卑怯者にはなりたくない。

「幽霊姫に、なりたいわ」
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