幽霊姫は止まれない!
 執務室の机は兄が噴き出した紅茶と、今まさに溢れている紅茶で大変なことになっているのだろう。青い顔をした兄の側近が焦っているのを見て、申し訳なく思ったものの、これは私のとっての重要事項。引き下がれもせず、ひとまずソファへと腰かけた。

 そんな私に合わせて兄も立ち上がり向かいのソファへと腰かける。チラリと執務机を見ると、これ以上の紅茶被害が出ないからか、少しだけ兄の側近が安堵した表情になるが──おそらく書類は手遅れだと思うので、あとでこっそりお詫びの差し入れをすることを誓った。

 メイドがすかさず私たちの前にクッキーと、私の前だけに紅茶を置いてくれる。兄の前に飲み物が置かれなかったのは、きっとまだ飲む前にすべて無駄にすることが目に見えているからだろう。

「それで、エヴァ。けッ、結婚というのは? ま、まさかその、アイツと結婚したいとかそんな話じゃないだろうな!?」
「アイツ、ですか?」
(誰のことかしら)
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