幽霊姫は止まれない!
「お気軽にサイラスとお呼びください」
「では私も、エヴァと」
「ははっ、愛称で呼んでいいの? 光栄だなぁ、エヴァ」
(早速の呼び捨て!)

 にこやかに笑いながら一気に心理的な距離を詰められるが、どうしてか嫌悪感は沸かない。
 その理由がわからず首を傾げると、再び彼からの視線を感じる。

「えぇっと……?」
「ん? あ、ごめんね。実はずっとエヴァに興味があったんだよね」
「興味、ですか?」
「そりゃそうでしょ。だって──」

 その言葉を聞き、無意識に自身のドレスをギュッと握り締める。私への興味で心当たりがあるとすれば、王族なのに魔力がないということだ。

(確かサイラス様は魔力が少ないんだったわよね)

 ならば自分より魔力が弱い王族が気になっていたのだろう。もしかしたら同情かもしれないし、むしろ憐れみを向けられているのかも。

 そんなことをグルグルと考えていると、サイラスの指先が、私の握り締めた手のひらを開けるようにそっと触れた。

「……だって、大事な友人が溺愛してる妹だよ? 気になるに決まってる」
「溺愛してる、妹?」
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