わけありくんを護ります





梅木くんのお重マフィンの日から数日経ったある日──


「あ」

学校から戻り、いつも通り部屋で過ごしていると、机に向かっていた比江島くんが声をもらした。

ベッドに座り、雑誌を読んでいた私は顔を上げた。

「どしたの?」
「シャー芯なくなりました」

振り向いた比江島くんは、空っぽのシャー芯のケースを見せてくる。

「ストックは?」
「ごめんなさい」
「……ないのね」

そう言えば私も残り少なかったかも。

「買いに行ってくる」

雑誌を机に置いて、お財布をポケットに入れる。

「お、俺も……」

立ち上がる比江島くん。だけどすぐ終わる買い物だ。

「お留守番。シャー芯くらいパッケージ見たら分かるから」
「でも……り、凛さんが変な人に声かけられたらどうするんですか!」
「まくに決まってるでしょ」
「え、えっと……じゃあ」

じゃあってなに。
どうしてもついていく理由づくりをしたいようだけど。

「外に出れば、追ってくる人に見つかる可能性大だけどいいの?」
「凛さんいるので」

そんなにこにこして言う?

「……分かった。用意して」
「はい!」
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