わけありくんを護ります
──大変だ大変だ、と怪我をしていない手を引かれ、寮に戻った。
部屋に入るなり、比江島くんのベッドへと座らされる。
「怪我した手のひら、俺の方に向けといて下さい……っと確かここに……あった」
比江島くんはベッド下から大きめな救急箱を取り出すと、床で箱をあけ、手際よく手当ての準備をしていく。
「よし、やりましょうか」
──と、私の手を軽くつかみ、ピンセットで刺さった木を抜こうとしてくれたのだけど……
「ねぇ、本当に大丈夫?手ふるえてるよ?」
「待って、俺の全神経ここに注いでる最中なんで……今、大きめの抜きますから」
1個1個に時間がかかる。
そしてようやく大きい木片をピンセットで抜いた。
「あ、傷から血が……血…血ぃ……!?」
あふれてきた血にいちいちさわぐ。
「やっぱりいい、ピンセット貸して」
「だ、だめっ……これくらいは出来ます!」
「全然出来るって顔じゃないんだけど。自分でした方が早いわ」
「それでも!……お願いします、俺にやらせてください」