無口な自衛官パイロットは再会ママとベビーに溺愛急加速中!【自衛官シリーズ】
「そうそう。アグレス。うちの旦那が呼ばれることはまずなさそうだけど、桜井さんはかなり期待されてると思うし、それだけの努力をしてるって旦那が褒めちぎってるから。当然かもね」

「そうですか。私は、あまり聞いてなくて」

榎本と違い、碧人が任務について口にすることは滅多にない。

仕事柄詳細に話せないのはわかるが、榎本から多少なりとも話を聞いている真菜が羨ましい。

榎本たちと違ってまだ結婚して日が浅いので仕方がないとわかっていても、自分は碧人にふさわしくないのではないかと、つい落ち込みそうになる。

「桜井さん、英語もペラペラなんでしょ?」

「そうなんです。私も最近知りました」

碧人は英語の勉強にも熱心だ。

海外訓練では上空での無線のやり取りは英語を使うので、英語が理解できネイティブ同様の会話力は必須らしい。

美月も英語には困らないが、碧人のネイティブに近い会話力には驚いた。

「将来は統合幕僚長? そうなると見た目も抜群だし話題になりそう。楽しみね」

コーヒーを口に運びつつ、真菜は冗談とも本気とも思えない口ぶりで言葉を続ける。

碧人のことを相当かっているようだが、美月にはいまひとつピンとこない。

「統合幕僚長か……」

それは自衛官の最高位だ。

その立場に就くにはかなりの努力が必要だということは、美月にも理解できる。

そして、それがたとえ冗談や単なる可能性だとしても、それを期待される碧人の能力の高さを知って、自分との立場の違いに愕然とした。

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