無口な自衛官パイロットは再会ママとベビーに溺愛急加速中!【自衛官シリーズ】
隣に座る蓮人の頭を優しくなでながら、碧人が蕩けそうな笑みを浮かべる。

「あら、蓮人君っていうの? じゃあ、カニコロいっぱい持ってくるね」

「うんっ……カニ…コロ?」

舌足らずな調子で答え首をかしげる蓮人を、榎本と真菜は顔を見合わせ「かわいー」と声をあげた。





「桜井さんが結婚したって旦那から聞いて、本当、びっくりしたのよね」

「そうですよね。急に決まったので」

真菜のからかい交じりの声に、美月は照れくささをこらえ、答えた。

昼営業が終わり閉店した店内には美月たち三人と榎本夫妻。

碧人と蓮人は奥のテーブルで榎本から戦闘機のレクチャーを受けている。

というより、榎本の戦闘機推しに蓮人がきゃっきゃと盛り上がっているのだ。

その様子を碧人が苦笑しつつ見守っている。

美月の視線に気づいたのか、呆れたような笑みを浮かべ軽く肩をすくめてみせる。

「蓮人君、ブルーのファンなんでしょ? 戦闘機好きのうちの旦那と波長が合うのかも」

「みたいですね」

タブレットを覗き込むふたりの目は輝いていて、楽しそうだ。

「桜井さんには申し訳ないけど、旦那の相手をしてもらえて助かる。うちの息子は野球命。全然興味ないから。あ、よかったらどうぞ」

真菜はカウンターに腰かけている美月の手もとにコーヒーを置くと、隣に並んで腰を下ろした。

「蓮人君がもう少し大きくなって桜井さんがエースパイロットだって気づいたら、友達に自慢するんじゃない? 旦那が言ってたけど、アグレッサー部隊に転属する可能性が高いみ
たいね」

「アグレッサー部隊……アグレス」

碧人をチラリと見やり、美月は小さくつぶやいた。

木島のことがあってから、すぐに調べたのだ。

リスペクトが込められた呼称だと知り、なるほどと納得した。

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