無口な自衛官パイロットは再会ママとベビーに溺愛急加速中!【自衛官シリーズ】
その一方で、普段美月の視界の中でいつも笑っている蓮人の姿が見えなくて、寂しさを感じるのはどうしようもない。

蓮人は今、そろって日葉里の旅館を訪れている碧人と美月の両親たち、そして日葉里の子どもたちと一緒に生まれて初めて映画館で映画を観ているはずだ。

子どもに人気のアニメ映画で、蓮人は昨日から楽しみにしていて今朝も早くから起き出してそわそわしていた。

美月と碧人も同行するつもりでいたが、今日はカフェの閉店後に予定しているアルバイトのふたりの送別会の準備があり、蓮人を両親たちに任せることにしたのだ。

保育園以外で長時間美月と離れたことのない蓮人の反応が気になったが、親の心配をよそに蓮人は「ばいばーい」とにこやかに手を振り日葉里の子どもたちと出かけていった。

そのあっさりとした蓮人の塩対応に、美月よりも碧人の方がショックを受け、しばらくの間言葉を失っていた。

とはいえ美月と碧人がふたりきりになれる機会は滅多にない。

岡崎から注文している花束の受け取りを頼まれ、碧人と車で出かけたついでに、せっかくだからと金沢まで足を伸ばすことにした。

高校時代も付き合っていた期間が短いこともあるが、碧人が受験生だったこともあり、ふたりで出かけたのは数えるほど。

今ふたりで金沢の雪を見ているこの時間が、とても貴重で大切なものに思える。

年末の街は買物客で賑わいざわめいていたが、一歩庭園内に入ると途端に空気が変わりすっと気持ちが落ち着いた。

蓮人がいたら、雪を見て大騒ぎしてますね」

庭園の出口へと手をつなぎ向かいながら、美月は頰を緩めた。

「だろうな。はしゃいで何度も転んで抱っこをせがむんだろうな」

「想像できます。蓮人、碧人さんが大好きだから。いつも碧人さんに抱きついて離れないし」

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