裏社会の私と表社会の貴方との境界線

答え合わせ

私がノートにメモを取り、それを真白が写真に撮ってみんなに送った。


他のペアも同じような方法で、情報を送ってきた。


学校から支給されたスマホはきっとこのためなんだろう。


情報交換は必須だ。


「こういうのって、みんなで集まって情報交換をしたほうがいいんじゃないの?」


と私が聞くと。


「この先は別行動じゃないとダメっていう決まりがあるからね」


と言われた。


特にそういう決まりは学園側が決めていることではないので、おそらく白綾達が何か言ったのだろう。


最後まで一緒にやったら、ポイントが割られてしまうから。


白綾達はそこを気にしていたようだし。


それは、ポイントはこの学園にとってすごく大切なものだからだろう。


それから真白が送られてきた情報に頭を悩ますこと1時間。


私はその間も、更なる情報を求めて聞き込みをしていた。


『犯人が分かったかもしれない』


そう連絡が来たのを見て、私は急いで真白のところに行った。


***


「真白!犯人が分かったかもって本当?!」


私は教室に戻ってきて早々に、食い気味で真白に聞いた。


真白は少し驚きながらも、私の質問に頷いた。


「ああ。でもその前に、少しだけ確認をしたいんだ。いい?」


「もちろんよ!」


ここで、真実が明らかになる。


***


「みなさん、お集まりありがとうございます」


私達は他のペア達に「事件の真実がわかった」と連絡を入れて、再び応接室に戻ってきた。


この部屋にいるのは計14名。


容疑者候補の5人と氷雨先生、残りの4ペア達。


もちろん、この中に“犯人”がいるのだ。


「さあ、答え合わせの時間だよ」


部屋にいる全員が、真白の言葉に息を呑む。


重苦しい空気がまとわりつく中で、真白だけは平然としていた。


まるで何かを…この状況を楽しんでいるようにも見えた。


だとしたら趣味が悪いけれど。


「まず初めに、ふたりの死の前後を確認しようか。ふたりは特に仲がいいわけではなく、ただいじめている側といじめられている側の関係にあった。そうだね?会長さん」


「え、あ…はい。ふたりは周りから見ても“友達”ではないということは明白でした」


「ですよね」


真白はまるで…いや、確実に分かっていたであろう。


でも、失敗が許されないこの空間では、1つ1つ確認していくのが妥当(だとう)だろう。


「次に、間谷はなんらかの理由があって蓮林を殺そうと考え、呼び出して殺そうと試みた。これは警察が調べたデータで明らかになっていることだ」


そう言って、1枚の写真をデスクの上に置いた。


昨夜ふたりがやりとりした時のもののようだった。


ちなみにこの資料は、警察の方に言って手に入れた。


「間谷は蓮林を殺そうとして待ち伏せ。けれど、間谷の計画はここで狂ってしまった。本当は頭を殴った時に蓮林は死ぬはずだった、でも彼は死ななかった」


そうだ。


その時、本来の間谷さんの計画は狂ったのだ。


「けれど今殺さねばならないので、計画を変更し、持参したナイフで蓮林に切りかかったものの…。その時になぜか避けられてしまった」


意味深な言い方をするものだ。


“なぜか”なんてみんなに疑問をぶつけながら話を進めていく、そのやり方は不快に思う人もいるだろう。


「紗倉さん」


「は、はい!」


話を振られると思わなかったのだろう。


声があからさまに裏返っていた。


「蓮林は護身術でも習っていたのかい?」


「い、いえ…。そんな話は聞いたことありません。運動も苦手って言ってましたし」


ここで1つの疑問が生まれる。


「蓮林は、本当に間谷のナイフを止めたのか」という疑問が。


おかしいと思わない?


普段から運動をしない…苦手な人が、そんなに運良くナイフを止められるものだろうか。


「真白は運動を普段していない人が、そんなパニック状態で運良くナイフを止められたという状況が、おかしいと言っているのよ」


真白が勿体ぶるので、私が代わりに言った。


運動をしているなら反射的に止められるかもしれないが、蓮林さんの場合はそれは絶対にない。


つまり、このことからわかるのは——。


「あ、わかった。間谷も蓮林も他の誰かに殺されたってことだろ?」


頭のいいと言われる夏希さんが、1番に気がついてくれた。


「ああ。これは、相打ちに見せかけた殺人だ」


そう、犯人はこの事件を「相打ちでふたりは死んだ」というふうに見せかけたのだ。


周りから見れば、間谷さんは蓮林さんに殺されたように見える。


犯人はそれをあえて狙ったのだ。


けれど、蓮林さんの運動神経が悪いという情報を知らなかった。


このことから、犯人は運動神経が悪いということをわかっていなかった人の可能性が高くなる。


あまり近しくもなく、遠くもない存在。


「じゃあ誰が犯人なのよ。さっさと教えてくんない?」


面倒くさそうに、亜由望さんが私達に向かって言う。


そうしたい気持ちはあるが、みんなが納得する“答え合わせ”をしたいというのが私のペアの望みだから。


申し訳ないが、亜由望さんの希望には添えそうにない。


「まあまあ。それじゃ、1つ1つ真実を暴いていこうか」


真白は亜由望さんの言葉を無視して話を進めた。


「まずは紗倉のこと。君は…1つ嘘をついているよね?」


「っ!」


今の動揺で、私と真白は全てを悟った。


紗倉さんが嘘をついているという私達の予想が合っていたこと。


「君は『間谷さんとは接点がない』と言っていた。けれど本当は、1度は関わったことがあるよね?」


「……はい。間谷先輩が蓮林先輩を馬鹿にするようなことを言っていたので、ついカッとなって口論になったことが…」


紗倉さんは少ししゅんとして、素直に答えてくれた。


紗倉さんの性格なら、すぐに告白してくれると思っていた。


言い合いをしているようにも見えたと言っていたが、おそらく“口論”とはこの時で合っているだろう。


「次に、紗倉の動機となるものを探したんだ。紗倉は蓮林を悪く言った間谷を殺す理由はあるが、とても仲の良い蓮林を殺す理由はない。まあ、蓮林と揉めたという可能性もあるけどね」


紗倉さんは「蓮林先輩を馬鹿にするようなこと」と言っていた。


もしかしたらその時には、蓮林さんは間谷さんにいじめられているということに気がついていたのかもしれない。


蓮林さんとは、揉めてもすぐに仲直りをしていたということを周りの人から聞いたので、揉めて殺したという線は薄いだろう。


つまり、紗倉さんには間谷を殺す動機はあっても蓮林さんを殺す動機がない…よって、容疑者からは外されるということだ。


「次に、亜由望は隠してることがあるよね?」


亜由望さんに視線が集まり、少し動揺する。


「な、なによ。あんた達に何がわかるってのよ…!」


その動揺に突き刺すように真白が言う。


まるで全てを知っている、とでも言うよな真白の視線に怖気付く亜由望さん。


「入学当初…1年生の頃は君は蓮林と仲が良かった」


「そ、そんなこと…」


「でも、何かしらのことが起きて、君は蓮林をいじめることになってしまった。違う?」


亜由望さんは首を必死に横に振っているけれど、そんなのは嘘だど言うことが丸分かりだ。


動揺しすぎね。


「ち、ちが…」


「証拠ならいくらでもあるのよ?嘘をついた分、犯人だと疑われやすくなるわ。本当のことを言いなさい」


私が亜由望さんの言葉を遮る。


結論から言うと、私達は亜由望さんを全く疑っていない。


でも、亜由望さんの口から「嘘をついていました」と言われた方がこの場の全員が納得するだろう。


「…もう!!そうよ!私は間谷に脅されたの」


蓮林さんとは始めは仲が良かったそう。


けれど、間谷さんに脅されて仕方がなく、一緒に蓮林さんのことをいじめていたという。


この情報は、亜由望さんの親友という方が言ってくれたこと。


おそらく間違いはない。


「晴琉とは親友だったの。でも、間谷にいろいろ言われて…。晴琉を守るためにも仕方がなかったの!!」


亜由望さんは下唇をグッと噛み、悔しそうに顔を歪めた。


これで蓮林さんを殺す動機がない亜由望さんは、容疑者から外された。


「話してくれてありがとうございます」


その頃、犯人は少しずつ動揺を見せるようになってきていた。
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