裏社会の私と表社会の貴方との境界線
犯人は誰?
残りの容疑者候補は3人となった。
「次は西園、君だ。…まあ、君の言っている事は全て本当だったようだね。正直疑いようがないよ」
少し呆れ気味に真白が言う。
聞き込みで聞いたことと、西園さんが話したことは全て同じだった。
つまり、西園さんの証言は全て本当だったということになる。
…“普通は”そう思うかもしれない。
けれど、私達の考えは違う。
「…とでもいうと思った?」
「は…?」
真白の言葉が、予想外のことだったのだろう。
途端に、西園さんは険しい顔になった。
「どういうことだい?」
その質問に真白が飄々と答える。
「そのまんまの意味だよ。君の言ったことには、とても重要な嘘があったんだよ」
「嘘…?証拠でもあるの?」
証拠は私達にはない。
でも、聞き込みをしている時気になった事があるんだ。
会長である西園さんの話を出した時にのみ、みんな「会長はなんて言っていたんですか?」と聞いてきた。
どうして西園さんの時だけ、と不思議に思った。
そんなこと聞く必要がないでしょうに。
ただ自分が知っている事を話すだけなのに、なぜ西園さんの答えを聞くのか。
なんのために?
そんなの決まってる。
(口裏合わせのため…でしょ?)
「証拠はないよ。でも、君達は口裏合わせをしていた」
「ちょっと!どういうことよ?!こいつが犯人ってこと?!」
亜由望さんが少しキレ気味で食いついた。
口裏合わせと聞いたら、普通はいいイメージは湧かない。
でも、犯人ということの他にも可能性がある。
「別に犯人とは言ってないよ。だた、君は犯人を庇ってる。違う?」
「…そんなわけないでしょ。それじゃあ僕に何もメリットがない」
「いいや、あるさ。君は口止めされてるんだろ?」
「っ…!」
ビンゴだった。
西園さんは、私達スカイ学園に連絡が入ったという事をなんらかの手段を使って知った。
「犯人に仕立て上げられるかも」とでも大学中に噂し、口裏合わせを行った。
きっとこれは犯人が意図的にした事。
そして、犯人はこうなる事が分かっていたのだろう。
それを知ってから、私もすぐに犯人が分かった。
犯人はおそらく…裏社会の人間。
こんな事、一般人ができるわけがないから。
情報をこんなに早く入手するのは一般人じゃできない。
「分かったからいいよ、それ以上喋らなくて。とにかく、君は犯人じゃないだろ?」
西園さんは黙って首を小さく縦に振った。
きっと彼は「言ったら殺す」とでも言われているのだろうから、認めてくれるか不安だったけれど。
認めてくれてよかった。
「さあて、その次は夏希だよ」
「はいはい、俺ね」
夏希さんはとても余裕そう。
まあ、犯人じゃないし…当たり前だけど。
この中でいえば、夏希さんが事件から1番遠い人物なのだから。
誰も夏希さんのことなんか微塵も疑っていないだろう。
「君は…学科は違うけど、2人と話した事はあるだろ」
「あー…バレた」
ははっと笑い飛ばす夏希さん。
こんなにあっさり認めるなんて。
本当に何を考えているか読めない人だ。
「そうだよ。俺は生徒会メンツだからさ、あいつらの関係に口出しした事がある。まあー意味なかったけど」
「あいつらの関係」ってことは、蓮林さんのいじめの事だろう。
まあ、どう考えても夏希さんには動機が存在しない。
「そう、僕はそれが聞きたかっただけだよ」
これは単なる「確認」だ。
夏希さんが犯人という可能性を0にするための。
残った容疑者候補は1人。
「さあ、全てを話してもらうよ。ね、悠目美亜」
真白は悠目さんを見て、愉快そうに笑った。
***
真白に名前を呼ばれても動揺することなく、冷静さを保つ悠目さん。
だけど、いつまでその冷静さを保つことが出来るだろうか。
「話すってなにをですか?私にはこの事件、関係ありません」
「いいや、あるよ」
真白はすぐに否定した。
だって、関係がないわけがないから。
「ここには、有力な情報を持っている人や容疑者候補が集まっているんだ。なのに君は関係ない?学園はそんなミスはしないよ」
この場には被害者に近しい人物や情報を持っている人、容疑者候補となる人を学園が呼んだのだ。
誰にも「事件とは関係ない」という言葉は存在しない。
それに、スカイ学園は全く関係ない人を集めたりもしないだろう。
嘘をつけば犯人と疑われやすくなる、と言ったばかりなのに。
聞いていなかったのだろうか?
「…そうですか」
正論を言われて、言い返せなくなってしまったようだ。
だってそうだよね、悠目さんは。
「結論を言おう。犯人は……悠目美亜、君だ」
「…」
真白が悠目さんを指差していう。
なにを考えているのかは分からないが、これでもまだ悠目さんは冷静さを保っている。
この子の精神は一体どうなっているのやら。
自分が犯人だと言われたのだから、もう少し焦ったりしてもいいのに。
「まずは証拠を出してくださいよ。仮にも私が犯人だとして、認めると思ってるんですか?
確かにそれも合っている。
なら、証拠を出して認めさせてやるしかない。
「そうだね、確かにそうだ。じゃあ君のいう通り、証拠を出すよ」
そう言って、真白は私が情報をメモしたノートを取った。
それを開いて悠目さんの目の前に置く。
「これは僕たちが集めた情報をメモしたノートだよ」
「…これがなんなんですか?」
悠目さんは少し不満げ。
「ここに、君と蓮林の情報が書いてある。君と蓮林は話したことはあまりないようだが、君は蓮林を妬んでいただろ?」
蓮林とはクラスメイトなため最低限の会話はしていたようだが、お互いに自ら話したりはしなかったそう。
けれど、悠目さんは蓮林さんのことを妬んでいた。
それは成績の差だ。
蓮林さんは学年1位、悠目さんは学年3位。
この結果は、1年生の時から変わった事がなかったそう。
親が厳しい悠目さんは、いつも成績に関していろんなことを口出しし、怒っていたそう。
「学年1位じゃなきゃ意味ない」、「なんでそんな簡単なこともできないの」ということを言われてきたと。
そして、悠目さんが「なんで地味な蓮林が成績1位なの?」という風に言っているのを見たという生徒が多くいたのだ。
きっと成績の差が、彼女にとって苦痛なことだっただろう。
ここから、悠目さんは蓮林さんを妬んでいると予想した。
「…あ、当たり前でしょ!!なんで私があいつより下なのよ!そんなの…ありえない!!」
「ありえないって、なにが?」
取り乱す悠目さんに、真白は特大爆弾を落とした。
その言葉を聞いて、悠目さんはさっきより怒っているみたい。
「ふざけんな!あんな…のほほんと生きてるやつが、私より上なんておかしいって思うでしょ?!」
悠目さんは、蓮林さんのことを相当下に見ていたようだ。
下だと思っていた相手に、ずっと抜かされ続けるのは嫌だっただろう。
けれど、別におかしいということはないと思う。
悠目さんが蓮林さんのことを見下しすぎているだけだ。
「君の感情に僕は興味がないんだ。話、進めていい?」
真白のその辛辣な言い方に、悠目さんは少し食い下がった。
真白もひどい言い方をするものだ。
「は、はい…」
悠目さんのさっきまでの態度は、どこへいったのやら。
ここで私が何か言っても無駄なので、黙ってやりとりを見続ける。
「君、間谷に脅されてたんだってね?」
その事を聞いて、悠目さんは表情を一気に崩した
正直言いたくないような事だった、ひどい内容。
悠目さんの実の父親がギャンブル好きで、多額の借金を背負っているそう。
そこで間谷にお金を借りることにしたが、もちろん見返りを求められた。
間谷の性格の悪さは、いろいろなところで噂されていた。
そんな人が見返りも無しに助けてくれるはずもなく。
そして、脅された。
彼女が間谷さんを恨むのも無理ない。
よって、この中で2人共を殺す動機があるのは悠目さんしかいない。
犯人は…この人だ。
全てを聞かされ諦めたのか、悠目さんは声を荒げた。
「そうだよ!!あんな奴ら、死んだってなにも言えないさ!私の苦労も知らないくせにさ…!!」
これがきっと悠目さんの本心。
私は今、とある事を確信した。
「次は西園、君だ。…まあ、君の言っている事は全て本当だったようだね。正直疑いようがないよ」
少し呆れ気味に真白が言う。
聞き込みで聞いたことと、西園さんが話したことは全て同じだった。
つまり、西園さんの証言は全て本当だったということになる。
…“普通は”そう思うかもしれない。
けれど、私達の考えは違う。
「…とでもいうと思った?」
「は…?」
真白の言葉が、予想外のことだったのだろう。
途端に、西園さんは険しい顔になった。
「どういうことだい?」
その質問に真白が飄々と答える。
「そのまんまの意味だよ。君の言ったことには、とても重要な嘘があったんだよ」
「嘘…?証拠でもあるの?」
証拠は私達にはない。
でも、聞き込みをしている時気になった事があるんだ。
会長である西園さんの話を出した時にのみ、みんな「会長はなんて言っていたんですか?」と聞いてきた。
どうして西園さんの時だけ、と不思議に思った。
そんなこと聞く必要がないでしょうに。
ただ自分が知っている事を話すだけなのに、なぜ西園さんの答えを聞くのか。
なんのために?
そんなの決まってる。
(口裏合わせのため…でしょ?)
「証拠はないよ。でも、君達は口裏合わせをしていた」
「ちょっと!どういうことよ?!こいつが犯人ってこと?!」
亜由望さんが少しキレ気味で食いついた。
口裏合わせと聞いたら、普通はいいイメージは湧かない。
でも、犯人ということの他にも可能性がある。
「別に犯人とは言ってないよ。だた、君は犯人を庇ってる。違う?」
「…そんなわけないでしょ。それじゃあ僕に何もメリットがない」
「いいや、あるさ。君は口止めされてるんだろ?」
「っ…!」
ビンゴだった。
西園さんは、私達スカイ学園に連絡が入ったという事をなんらかの手段を使って知った。
「犯人に仕立て上げられるかも」とでも大学中に噂し、口裏合わせを行った。
きっとこれは犯人が意図的にした事。
そして、犯人はこうなる事が分かっていたのだろう。
それを知ってから、私もすぐに犯人が分かった。
犯人はおそらく…裏社会の人間。
こんな事、一般人ができるわけがないから。
情報をこんなに早く入手するのは一般人じゃできない。
「分かったからいいよ、それ以上喋らなくて。とにかく、君は犯人じゃないだろ?」
西園さんは黙って首を小さく縦に振った。
きっと彼は「言ったら殺す」とでも言われているのだろうから、認めてくれるか不安だったけれど。
認めてくれてよかった。
「さあて、その次は夏希だよ」
「はいはい、俺ね」
夏希さんはとても余裕そう。
まあ、犯人じゃないし…当たり前だけど。
この中でいえば、夏希さんが事件から1番遠い人物なのだから。
誰も夏希さんのことなんか微塵も疑っていないだろう。
「君は…学科は違うけど、2人と話した事はあるだろ」
「あー…バレた」
ははっと笑い飛ばす夏希さん。
こんなにあっさり認めるなんて。
本当に何を考えているか読めない人だ。
「そうだよ。俺は生徒会メンツだからさ、あいつらの関係に口出しした事がある。まあー意味なかったけど」
「あいつらの関係」ってことは、蓮林さんのいじめの事だろう。
まあ、どう考えても夏希さんには動機が存在しない。
「そう、僕はそれが聞きたかっただけだよ」
これは単なる「確認」だ。
夏希さんが犯人という可能性を0にするための。
残った容疑者候補は1人。
「さあ、全てを話してもらうよ。ね、悠目美亜」
真白は悠目さんを見て、愉快そうに笑った。
***
真白に名前を呼ばれても動揺することなく、冷静さを保つ悠目さん。
だけど、いつまでその冷静さを保つことが出来るだろうか。
「話すってなにをですか?私にはこの事件、関係ありません」
「いいや、あるよ」
真白はすぐに否定した。
だって、関係がないわけがないから。
「ここには、有力な情報を持っている人や容疑者候補が集まっているんだ。なのに君は関係ない?学園はそんなミスはしないよ」
この場には被害者に近しい人物や情報を持っている人、容疑者候補となる人を学園が呼んだのだ。
誰にも「事件とは関係ない」という言葉は存在しない。
それに、スカイ学園は全く関係ない人を集めたりもしないだろう。
嘘をつけば犯人と疑われやすくなる、と言ったばかりなのに。
聞いていなかったのだろうか?
「…そうですか」
正論を言われて、言い返せなくなってしまったようだ。
だってそうだよね、悠目さんは。
「結論を言おう。犯人は……悠目美亜、君だ」
「…」
真白が悠目さんを指差していう。
なにを考えているのかは分からないが、これでもまだ悠目さんは冷静さを保っている。
この子の精神は一体どうなっているのやら。
自分が犯人だと言われたのだから、もう少し焦ったりしてもいいのに。
「まずは証拠を出してくださいよ。仮にも私が犯人だとして、認めると思ってるんですか?
確かにそれも合っている。
なら、証拠を出して認めさせてやるしかない。
「そうだね、確かにそうだ。じゃあ君のいう通り、証拠を出すよ」
そう言って、真白は私が情報をメモしたノートを取った。
それを開いて悠目さんの目の前に置く。
「これは僕たちが集めた情報をメモしたノートだよ」
「…これがなんなんですか?」
悠目さんは少し不満げ。
「ここに、君と蓮林の情報が書いてある。君と蓮林は話したことはあまりないようだが、君は蓮林を妬んでいただろ?」
蓮林とはクラスメイトなため最低限の会話はしていたようだが、お互いに自ら話したりはしなかったそう。
けれど、悠目さんは蓮林さんのことを妬んでいた。
それは成績の差だ。
蓮林さんは学年1位、悠目さんは学年3位。
この結果は、1年生の時から変わった事がなかったそう。
親が厳しい悠目さんは、いつも成績に関していろんなことを口出しし、怒っていたそう。
「学年1位じゃなきゃ意味ない」、「なんでそんな簡単なこともできないの」ということを言われてきたと。
そして、悠目さんが「なんで地味な蓮林が成績1位なの?」という風に言っているのを見たという生徒が多くいたのだ。
きっと成績の差が、彼女にとって苦痛なことだっただろう。
ここから、悠目さんは蓮林さんを妬んでいると予想した。
「…あ、当たり前でしょ!!なんで私があいつより下なのよ!そんなの…ありえない!!」
「ありえないって、なにが?」
取り乱す悠目さんに、真白は特大爆弾を落とした。
その言葉を聞いて、悠目さんはさっきより怒っているみたい。
「ふざけんな!あんな…のほほんと生きてるやつが、私より上なんておかしいって思うでしょ?!」
悠目さんは、蓮林さんのことを相当下に見ていたようだ。
下だと思っていた相手に、ずっと抜かされ続けるのは嫌だっただろう。
けれど、別におかしいということはないと思う。
悠目さんが蓮林さんのことを見下しすぎているだけだ。
「君の感情に僕は興味がないんだ。話、進めていい?」
真白のその辛辣な言い方に、悠目さんは少し食い下がった。
真白もひどい言い方をするものだ。
「は、はい…」
悠目さんのさっきまでの態度は、どこへいったのやら。
ここで私が何か言っても無駄なので、黙ってやりとりを見続ける。
「君、間谷に脅されてたんだってね?」
その事を聞いて、悠目さんは表情を一気に崩した
正直言いたくないような事だった、ひどい内容。
悠目さんの実の父親がギャンブル好きで、多額の借金を背負っているそう。
そこで間谷にお金を借りることにしたが、もちろん見返りを求められた。
間谷の性格の悪さは、いろいろなところで噂されていた。
そんな人が見返りも無しに助けてくれるはずもなく。
そして、脅された。
彼女が間谷さんを恨むのも無理ない。
よって、この中で2人共を殺す動機があるのは悠目さんしかいない。
犯人は…この人だ。
全てを聞かされ諦めたのか、悠目さんは声を荒げた。
「そうだよ!!あんな奴ら、死んだってなにも言えないさ!私の苦労も知らないくせにさ…!!」
これがきっと悠目さんの本心。
私は今、とある事を確信した。