裏社会の私と表社会の貴方との境界線

side雨晴瑠璃華 〜役割〜

私は雨晴瑠璃華という名前なんだよ?


でも、あの方はこう言った。


『ようこそ、こちらの世界へ。歓迎するわアオキ』


私っていったい誰なんだろう。


そんな疑問を抱えながら、日々を過ごしていた。


***


暗い暗い闇の中みたい。


どこにいるの、お姉ちゃん。


体が重たくて動かないな。


でも、誰かの声だけは少しだけ聞こえてくる。


お姉ちゃんな気がするのは、気のせいかな。


***


「改めて自己紹介するわ。初めまして、私は…女神No.1のカレン。幻想を現実に引き出すことができる女神よ」


「…情報量多すぎだろ。なんとか理解…はできたけどさ〜」


やっと喋ってる、目の前にいる人達の内容を理解できた。


まだ体は動かないんだけどね。


「それってさ…本当にできるなら、すごい能力なんじゃないの?」


「…その通りね。この能力は、なんでもかんでもありって感じだから。現に女神の中で1番強いのも、私だし」


能力?


あれ、この世界って魔法使えたっけ。


夢と混ざってるのかな?


ふわふわしてるし、そうなのかもしれない。


「他に能力を知っている人はいるの?」


「いいえ、あーでも華お姉ちゃんには話したけどね。あの人も女神だから」


「「え?」」


華お姉ちゃんって、誰?


女神ってことは。


あー、また黄泉様がなんかやったのかな。


あの人ってば、本当にそういうの好きなんだから。


「華お姉ちゃんの本名はルピナス。能力は透視の瞳で、目を合わせれば相手の全てが分かるの」


「やば…それもそれですげー能力だな」


「だって、女神は神だよ?」


ルピナス様の名前、久しぶりに聞いたな。


今は確か人間界にいるとか。


「私達と人間じゃ違うのよ、なにもかも。でも、私は人間と分り合いたいわ。じゃあ、とりあえず禁忌の書庫に行くわよー」


そういえば、なんで女神の話になってるんだっけ。


お姉ちゃんは女神のことを知ってるの?


なんで?


バレちゃっただけなら、記憶を消せばいいんだけど。


報告することが私達天使の仕事。


「はー?禁忌の書庫は結界がはってあんだろ?どうやって入るんだよ」


「え?結界なんてすぐ壊せるし、はりなおせるよ?」


これもうさ、人間じゃありえないよね。


報告しないと。


まずはカレン様に言わないとかな。


「あーうん。華恋はそういうやつだった」


「よく分からないわね、あなた達」


「「こっちのセリフだ」」


くすくすとみんなが笑い出して、私はふと考えた。


お姉ちゃんの名前って、女神のトップのカレン様と同じだなって。


お姉ちゃんがルピナス様を知ってるのも、女神のことを知ってるのも。


華恋がもし“カレン”なら。


かけた部分のピースが埋まるように、謎が解けていく。


起きなきゃ、確かめなきゃ。


自分の役割を全うするために今起きなければ。


そして、重い重いまぶたを無理矢理開いた。


動かないはずの口も、自然と動いてくれた。


「お姉ちゃん、私…」


そう言うとお姉ちゃんとユウくん、ツキくんの驚いた顔が私の瞳に映った。
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