裏社会の私と表社会の貴方との境界線

作戦会議

千智と紺凪は、顔を見合わせた。


そして、笑顔で千智が言った。


「それじゃ!作戦会議しよ〜!」


その言葉に、全員が頷く。


瑠璃華も2人が協力してくれることに、ほっとしているようだった。


「私的には、2人を人目のあるところでかくまいたいわ。サクも人目があっては、手は出せないと思うからね」


「確かにそうだね。…じゃあさ、瑠璃華と羅華もスカイ学園に通っちゃうのは?」


紺凪の驚きの提案に、耳を疑った。


でもそれなら、常に私達の誰かと過ごすことができる。


まさに名案だった。


けれど、ひとつだけ難点がある。


「名案ね。だけど、それだとサクに居場所が常にバレることになるわ。そうすれば逆に私達が、学園が側に正体を知られてしまうかもしれないわ」


スカイ学園に入れば、情報が登録されてしまう。


たとえ偽造(ぎぞう)だったとしても、サクにはバレてしまう。


メア家は裏社会では世界2位のハッカーだ。


ちなみに、世界1位は雨晴家なんだけどね。


「そうだね。あと、レンにバレるだろうね。学園に通ってるんだからさ」


「そりゃそうだろな。やっぱ無理なんじゃね〜?」


レンが学園内にいる限り、常に警戒しなくてはいけなくなる。


それに、実践授業となれば危険が増える。


「じゃあ、私達が(おとり)になるのはどう?」


「ど、どういうこと…?」


「私と羅華くんがわざと、レンちゃんの目につくようにするんだよ。それで、サクくんが来たところを迎え撃つの」


「ダメよ!!」


私はその作戦を聞いて、声を荒げて立ち上がった。


それじゃあ、昔と同じになっちゃいそうで怖い。


そんな危険を犯してまで、囮になんてなってほしくない。


「でも…じゃあ、どうするの?それ以外に方法があるの?」


「それは…」


確かに、それよりいい作戦なんてない。


「……分かった。それでいきましょう」


そう返事をするしかなかった。


「これだけは約束して。常に誰かと行動するようにしてね?」


コクコクと頷く瑠璃華を見て、安心するしかなかった。


拭えない不安、消えない過去。


まるで呪いのようだ。


「じゃあ、学園長に話通しとくねー!瑠璃華ちゃんと羅華くんは、実習生みたいな感じって言っとくね」


「ええ、よろしく頼むわ」


不安は消えないけれど、見えないところでいなくなるよりいいよね。


そう考えて、私はもう考えないことにした。


ピロン。


その時、私のスマホが音を鳴らした。


この音は…。


「悪いけど、少し席を外させて」


「いいよー」


私は席を立ち、部屋を出ていった。


それから階段を駆け下り、寮を出る。


さっきのは、レラが近くにいるということを知らせてくれる音。


いつもは寮の裏庭に来るから、きっとそこにいる。


レラというのは、魔界でレイが飼っている不死鳥のことだ。


魔界にはヴァンパイアや能力者達が住んでいる。


そんな魔界にいる者達に飼われているのが、使い魔という存在だ。


誰でも1匹は飼っている使い魔。


動物の姿をしているが、何かしらの能力を持っているため見た目以上に強い。


普段は主人の近くにいるが、他の仲間などに伝言を伝えるように頼んだりもできる。


レイは、レラに何か伝言を頼んだのだろう。


緊急の何かではないといいけれど。


裏庭に出ると、紫色の炎を尻尾にまとった美しい不死鳥が、木にとまっていた。


「レラ…」


『お待ちしておりました、カレン様』


透き通る声が、私の心を揺らがせた。
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