裏社会の私と表社会の貴方との境界線

天界の双子

魔道具『反境(はんきょう)』。
魔界ではとても高価なもので、王族でもなかなか手に入らないと言われる代物。
これは、魔界と人間界を繋いで映せる物なのだ。
使い方は簡単、吸血鬼の血液を鏡に1滴吸収させる。
それだけで1時間は繋げられる。
「反境よ、ここに魔界への小さき扉を開け」
自分の中に入っているレイの吸血鬼の血だけをたらし、その言葉を言った。
それと同時に鏡は光を放ち、普段レイがいる部屋を映し出した。
鏡の中には、イスに座っているレイが見える。
「こんにちはカレン様、皆様。カレン様の従者のレイと申します」
このお堅い感じが、レイって感じがする。
漆黒の黒髪、闇を感じさせるような光のない瞳、恐ろしいほどに美しい容姿。
人形のような外見、人形のような性格。
それが、黄泉神ナンバー10のレイという人物だ。
「それで?レイさん、話があると華恋に聞いたのですが」
「はい、その通りです。カレン様の状況は全て把握しております。そして、私はカレン様の知りたがっている情報を全て持っています」
いつも通りだから、私は全く驚かない。
みんなはどうしたらいいかって感じで、黙っちゃってるけどね。
「あまりレイについて深く考えないほうがいいわよ、面倒だから。それよりレイ、貴女がもっている情報…全てを提供してちょうだい」
私の言葉に、レイは口角を上げた。
「もちろん」
背筋がヒヤリとした。
底知れない怖さを、ここにいる全員が味わったと思う。
けれど、そんなことはお構いなしでレイの話は始まる。
「長くなると思いますので、リラックスした状態でお聞きください。ではまず、サク様のことから」
レイは人の名前を誰1人として、様をつけずに呼んだことがない。
癖なのか意味があるのか。
私は長年一緒にいるとはいえ、レイのことはほとんど知らない。
「カレン様とアオキ様をご存じかと思いますが、黄泉神ナンバー12を知っていますか?」
「ええ、知っているわ。もちろん仕事上会ったこともある。名前は確か…シルヴァといったかしら」
「私は名前しか知らないなぁ」
白に近い金髪が特徴の男、シルヴァ。
能力は確か…「夢魔(むま)」。
「その通りです。能力は夢魔、自分の境界に入れた魂を操ることができます」
「なあ、そいつとサクになんの関係があんだよ」
結論から聞きたいと言った様子で、イラだっているユウがレイに言った。
一瞬レイの表情が変わったように見えたが、気のせいということにしておこう。
きっとユウの態度が気に入らなかったのだろう。
いつものことだ。
「順を追って説明をさせてくださいユウ様。それで、シルヴァ様は天界では唯一の双子です。兄の名前は…」
「ソル、よね?」
「…はい」
女神のトップである、それを自覚している私には神々を管理するという役割がある。
年に一度神々の全員と話をして、情報をまとめて黄泉様に送る。
たったそれだけのことだけど、案外記憶には残るもので。
シルヴァ様とソル様はよく覚えている。
「ちょっといい?」
「はい、なんでしょうか」
突然ツキがレイに質問をした。
「僕、その…神様?のこととかほとんど分からないんだけど。そっから説明してもらっていい?」
その言葉で、レイの視線が私に向く。
…言いたいことは分かってます。
そんなことも言っていなかったのですか、と言いたいのだろう。
「カレン様…」
「あはは…ごめんなさい」
静かにため息をついたレイは、ツキに向かってうなずいた。
「分かりました。少しこの話は置いて、私から天界のことについてお話しさせてください」
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