裏社会の私と表社会の貴方との境界線
***


どうしてこの世界はこんなにも狂ってしまったのだろう。


私にはどうしようもなかった。


初め、女神でもなんでもなかった私はただ使用人として働いていた。


それが普通だと思い込んでいた。


辛い環境では、そう思える人が幸せだ。


でも、本当はずっと分かってた。


この世界は“狂ってる”。


アイリス家に生まれた時は、家族だというのにも関わらず魔力で判断され捨てられた。


今世ではただ裏社会のボスの娘だからといって、殺しを強要された。


いつも私の生活は普通じゃなかった。


でも、それをいつしか笑顔で誤魔化していた。


きっとたくさんの人に無理をさせた。


これは、私の問題。


女神だから…それも関係あるとは思うけど、今はこの世界に向き合わなきゃって思う。


そう、それが私が生まれてきた意味だから。


だから、お願い。


私を止めないで。


***


「カレン様、大丈夫ですか?」


相変わらず無表情でいうレイに、私はやっぱり彼女のことがわからなくなった。


まあ、レイはいつもこんな調子だけど。


私は涙をふき、一度落ち着くために深呼吸をした。


「ええ、大丈夫よ。心配しないで。それより、今は作戦よ」


周りに気がつかれたくないこと思いを、隠すように笑った。


不自然なのはわかってる。


でも、これしか今はできそうになかったの。


「わかりました。ですが、内容は後日でもよろしいですか?まだ調べたい内容がありまして」


「…できるだけ急いでちょうだい。この子達の命がかかっているの」


「はい。カレン様のお心のままに」


レイはそう言い残して、消えていった。


反境はもうただの鏡に戻ってしまった。


それと同時に、みんなが肩の力を抜いたのがわかる。


「なんかどっと疲れたなぁ、ほんと」


ユウのつぶやきに、みんな頷く。


それを見て、私は苦笑いした。


「ごめんね。レイはいつもあんな感じだからさ」


「あれでよく華恋は一緒にいれたよね。僕は嫌だ」


あはは…それは私もそう思うわ。


まあでも、今はそんなに苦痛はないかも。


「それじゃあ僕達は失礼するね。さっそくふたりのこと、学園長に言ってみるよ」


「ええ、頼んだわ」


「行くか〜。じゃあねれんれん!」


そう言って、紺凪と千智は部屋を出ていった。


行動が早いわよね。


まあ、その方が助かるんだけど。


「それでー、結局レイ様は何を伝えに来たの?私よくわかんない!」


ふたりが去った後。怒った様子で私に聞いてきた瑠璃華。


「一番伝えたかったのは、サクが天界の神と関わってるってことだと思う。だから、手を引けって」


「…その、シルヴァ様だっけ?って具体的にどう危険なの?」


「シルヴァ様は能力が危険なのよ」


彼の…というか、あの双子の能力はとても厄介。


私は目の当たりにしてるから、それがよくわかっている。


「どんな能力なの?」


「神々に各々境界というものが存在しているのはわかるわね?」


「自由に動ける場所ってことだよねぇ?能力も強いものを発動できるって!」


「そうよ」


まさに境界というのは、瑠璃華が言ったもの。


普通は境界がある場所は指定されてるんだけど…。


「シルヴァ様は境界を持っていないの。正確に言えば、この世界全体が彼の境界なの」


私達はここにいる限り、彼の所有地から抜け出せない。


それが彼の能力「境界移動」。
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