裏社会の私と表社会の貴方との境界線
竜巻のように形を変えたせいで、私たちは強い衝撃を受けて屋敷の外まで飛ばされた。


このまま地面に叩きつけられては、私も斗亜も無傷ではいられない。


「“速度減少”!」


私はとっさに能力を発動させて速度を落とした。


止まらなかったのは、ソルの能力で撃たれてしまう可能性があったからだ。


「斗亜!!ソルの狙いは、着地地点で一撃を喰らわせることよ!貴方に守護(シールド)を使うから、逃げてちょうだい!!」


その言葉に斗亜は首を横に振った。


「僕なら大丈夫だ!能力を使って対処するから、計画通りに華恋はサクのところに行って!」


その表情からは、なにか策があることはわかった。


だから、私は信じてみようと思った。


そして、ゆっくりと頷いて下の様子を見た。


いつのまにか斗亜の真下にいるソル、そして少し離れた場所で様子を伺うサクが見えた。


さらに周りに視線を向けると、奥にリオの姿があった。


私は急いで通信機を使用する。


「こちら華恋。リオを発見したわ。奥の花壇に隠れてる。私たちの心配は無用だから、計画通りに進めてちょうだい」


『承知いたしました。計画を進めます。そちらにレラを向かわせますので、なにかありましたら使ってください』


そう言って、レイが通信を切った。


それから、斗亜に向かって言った。


「私は先に下に行くわ!そっちはソルの相手を!!一応守護(シールド)は使っておくから!」


斗亜はコクコクと頷いた。


それから、自分の速度をもとに戻す。


私は真っ逆さまに落ちていった。


地面に着地する瞬間、能力で自分の重力をゼロにした。


ふわっと浮き上がり、重力をもどせばきれいに着地できた。


それから、私はサクに笑いかけた。


「こんな大胆なことをしてよかったの?サク」


「ふっ、僕の心配をするなんて相当余裕があるんだね。華恋こそよかったの?雨晴ボスがお怒りだったよ?」


私はわずかに反応してしまった。


お父様は私に随分と期待していた。


だからこそ、今回ナイトメアを裏切った私に怒りを見せるのは当然のこと。


でも、別によかったと思う。


私はお父様が好きなわけではないから。


「別にいいわ。華お姉ちゃんを殺しておいて、呑気に生きられるわけないもの。一気に子供を3人失って大変なものね」


私は笑顔を崩さずそう言った。


ただ、サクはなんの反応も見せない。


けれど、いきなりニタリと笑って言った。


「そうだね。でも、大変なのは華恋のほうじゃない?死ぬってわかっててここにきたんだろう?」


「っ…!どうして貴方がそれを知っているの…?」


私は驚いて目を見開いた。


私のことについてここまで知っているのは黄泉様かレイ、華お姉ちゃんだけだというのに。


どこからその情報を仕入れた…?


「天界で調べたんだよ。婚約者を調べるのは当たり前のことだよ。それに、その呪いをかけたのは僕なんだからね」


「っ…!!どういうこと?呪い…?」


私は眉をひそめる。


サクの表情はより一層闇を思わせた。


「18歳までしか生きられない呪い。そして、転生し続ける呪い。チャンスは18回、その間に僕は君を手に入れる」


まるで生気が感じられない表情。


——正気じゃない。


「そんなことして、いったいなにになるの?」


「君は僕に囚われる。僕から逃れられなくなる。前世もそうだったろ?」


「前世?いったいなにを言っているの?」


サクは私に近づいてきて、逃がさないように壁に追い詰めた。


それから、笑って言った。


「エペ・アカンサス王太子殿下。それが前世の僕の名だよ。カレン嬢、また会えて光栄だよ」


ドクンッと心臓が跳ねた。


その名は、レンカお姉様の婚約者であり私たち姉妹を処刑した者の名だった。
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