裏社会の私と表社会の貴方との境界線

side真白斗亜 〜第2の能力〜

ひと足先に着地した華恋を見送って、俺は改めて下を見た。


あのソルとかいう奴が俺を見上げている。


攻撃してくる様子はない。


そこはひとまず安心だった。


さて、この後の作戦だ。


といっても、全く不安はない。


俺はすでに第2の契約を結んでいて、強化された能力を使えるから。


ふたつ目の能力、それは「情報の書き換え」。


なにか世界の(ことわり)を変えるようなものでなければ、なんでも書き換えられるのがいいところだ。


華恋は着地を狙って攻撃してくると教えてくれた。


それさえ失敗しなければ、大丈夫だ。


「“ルール変更”。全攻撃のダメージを10分間ゼロにしろ」


唱えるとともに俺の横に姿を現した情報の神エニグマ。


フードを深く被り、いつものように顔は見えないようになっている。


こいつは俺にだけ見えるエニグマの仮の姿。


「オッケー。これから10分以内に受ける攻撃無効ね〜」


いつものハイトーンで仕事をこなす。


杖を一振りすると、右上に表示されたステータス値に情報が追加された。


『攻撃無効 残り9:58』


しっかりと適用されたようで安心する。


俺には情報の可視化という能力があるから、こうやってみんなステータス化される。


まあ、エニグマは例外だが。


「んじゃ、おもしろそ〜だしボクもここにいるね!すぐルール変更してあげる!」


「助かる」


こいつは意外と俺に懐いてくれたようで、よく助けてくれるありがたい存在だ。


そうしているうちに、地面に着地した。


全くダメージはなくふわりと地面に足をつけた。


同時に炎をぶつけてきたが、もちろん無効になっている。


「なんや?俺の攻撃が効いてない…?お前、なにをした?」


さっきまでの余裕のある飄々(ひょうひょう)とした感じではなく、低く警戒するような声。


逆に俺はその様子を余裕ぶった顔で見た。


「僕の能力ですよソルさん。第2の能力で情報を書き換えて攻撃を無効にしたんです」


「…たしかお前の契約神は、エニグマだったんよなぁ。真聖家っちゅうのはそこまで神の能力を使えるんか?」


やはり隣にいるエニグマが見えていないようで安心した。


ちなみに、普通はこういう強い能力は使えない。


俺はエニグマに気に入られて、対価を上乗せしてくれているだけだ。


別に不正じゃない。


「さあ、どうでしょう?」


ソルはピクッと体を反応させ、俺をギロッと睨んだ。


俺は冷静な表情を崩さない。


「俺はお前が嫌いや。俺と同じ…策略的な目ぇしとる」


そう、こいつも同じなのだ。


普段は偽りに仮面を被り策略的に動く、そして裏ではとんでもない素顔を持っている。


“僕”と言う時は俺が仮面をかぶっている証拠だ。


似たもの同士で、気がつくのは早いな。


「あいつ、もうすでにちょーっと崩れかけてるね。こっちの方が優勢だ。さすがに格上の神のステータス改変まではできないから、乃亜はもうちょっと頑張んないとねぇ」


俺の耳元でそう(ささや)いてくるエニグマ。


どうやらこちらが優勢になってきたようだ。


「さあ、こいよ。神だかなんだか知らないけど、華恋を傷つけようとしてるんだ。タダで済むと思うなよ?」


俺は今までで1番冷たい目で睨んだ。


ソルの表情がひきつった。


「お前、とんでもないな…」


さっきまで余裕ぶった表情はどこにもなく、ソルはゆっくりとそう言った。


俺を恐怖しているようだ。


「これだけ怒りを感じたのは今回が2度目だ」


抑えきれない苦しみがふつふつと湧き上がった気がした。


そして俺たちの戦闘は始まった。
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