【プロット】嘘の仮面を剥がしてみせて
②物語全体のあらすじ
若月葵は毎日仕事に邁進している。大学生の弟、高校生の妹の食費と生活費を稼ぐためだ。子どもの頃に両親を交通事故で失い、祖父母に育てられた葵たち兄妹だったが、数年前に祖父母も他界。葵は大学を中退し、家事代行として日夜働いていた。
ある日、上司から少し変わった家を担当するように言われる。白城昴という男性の一人暮らしの家の家事全般を請け負ってほしいと、彼のマネージャーを名乗る木之下という人物からの依頼だった。白城は高級マンションに住んでいるものの家を空けることも多く、ほとんど葵の前に姿を現さない謎の人物だった。
だがある日、家事をこなしている間に白城と木之下が帰宅し、白城が突然「それなら彼女でいいんじゃないか」と言う。
最初はその提案を却下していた木之下だが「業界人じゃない、普通の子のほうがメリットがある。それに彼女はとてもよく働いてくれている」と白城が説得し、渋々了承する。木之下は葵を呼び「とある仕事を追加で頼みたい」と言う。
彼から提示されたのは「白城に恋愛の経験を積ませるために、恋人として過ごしてほしい」という内容だった。
白城は、演劇賞を総なめにするほどの新進気鋭の演出家だった。2年ほど国費で海外に留学して帰国した。そして今回、初めて映画監督を務めることになっていた。その映画は王道ラブストーリーなのだが、白城があまりに恋愛に興味を示さないため不安に思った事務所の社長が、木之下に「白城に恋愛経験を積ませろ」という命じたのだった。
元々女優などで相手を見繕っていた木之下だったが、白城は大の女嫌いだった。そのせいで相手が美人女優であっても見向きもしない。ただ本人も社長の命令に背く気はなく、実際恋愛経験が乏しい自覚はあった。なんとかしたいと思いつつ、誰にも心惹かれない白城。「誰ならいいんだよ」と聞いた木之下に、「彼女とか」と言って指名したのが、葵だったのだ。最初木之下は地味な葵にそんな役目が務まるのかと疑問視していたが、白城が「彼女が家を掃除していても気にならない」と言ったので、葵に正式に恋人役を依頼することにした。
会社を通さずに、今の給料の倍支払う、という条件を提示され、葵は即決する。
もうすぐ弟は大学を卒業するが奨学金の返済があるし、妹が気を遣って大学に行くのを躊躇っているから、今よりお金がもらえるのであれば悩んでいる理由がなかった。
そうして契約を結んだ二人は、普通の恋人同士のようにメッセージでやりとりをしたり、会えない日は電話を掛け合って連絡を取るようになる。最初のうちは全然会話が続かなかった二人だが、白城の家で顔を合わせるたびにメッセージの真意を説明したり、電話では上手く伝えられなかったことを話すうちに、少しずつ距離が縮まっていく。
女嫌いと言っていた白城は、たまに甘い言葉も囁いて揶揄うこともあり、葵は「本当に女嫌いなんだろうか」と疑問に思う。
ある日、葵の休日と白城のオフが重なり、二人で出かけることにする。
白城が新調したいと言っていたソファカバーを買いにインテリアショップにいった二人。ソファの座り比べをしてみたり、マットレスを確認したり、テーブルの大きさについて話し合ったり、まるでこれから同棲するカップルみたいな話をしていると、店員さんにも新婚夫婦扱いされ、葵はひとりドキドキしてしまう。
無事に買い物を終え食事をして帰ろうかと話していると、白城に声をかける女性が現れる。
朝野友香と名乗るその女性は、白城を慣れ慣れしく「昴」と呼び、葵に値踏みするような視線を向ける。葵が気まずく思っていると、友香は白城を食事に誘う。ただ異様なほど冷たく断った白城に対し、友香は「演劇のことしか考えてないあんたなんて、男としての魅力が全く感じられない」と捨て台詞を残して立ち去っていく。妙な空気になってしまい、葵は今日は帰りましょうと提案する。
家に帰ってもどこか暗い白城に夕飯を作る葵。これは家事代行の仕事だから、と白城の分だけ盛り付けていると、話があるから一緒に食べようと誘われる。友香と付き合っていたこと、浮気をされた挙句、他の男に「白城は面白みがない」と話しているのを聞いてしまって、それ以来恋愛をする気にならない、と言う白城。自分にやっぱり恋愛は無理かもな、という白城の話を聞いて、思わず泣き出す葵。白城がうまく付き合えないことを謝ると、葵はそんなことで泣いているんじゃない、白城が可哀想だ、と言う。浮気されたら辛い。そんなふうに言われたら辛い、それなのに、自分がそんな人間だから、なんて言わないでほしいと訴える葵。
白城はそんな葵に、実は最近友香から連絡がきていて、どうしようかと悩んでいたと打ち明ける。賞を取って名前を見かけたから連絡してきたんだろうということは予想してたけど、今日葵と一緒にいたところで会って、はっきりわかって良かった、という白城。
それに葵の料理が美味しいから、こっちの方がご馳走だという白城に、葵はまたひとつ彼が本当に気になってしまうことを自覚するのだった。
白城のもとに完成した台本が届き、とうとう映画の撮影開始が近づく。台本を見ながらアイディアをまとめたり打ち合わせをする時間が必要になり、二人はあまり一緒にいられない。
「恋人っぽいことしなくて大丈夫ですか……?」という葵に、白城はソファに座るように促し、その上に膝枕の体勢で寝転がる。そのままの体勢で白城は台本を読んでいたが気づけば寝ている。葵は頭をそっと撫でて、頬を触る。唇を撫でて、それから自分の唇を指で触れる。葵が我に返った瞬間、白城が眼を覚ます。
真っ赤な顔で自分を見下ろす葵に、どきっとする白城。二人は微妙にギクシャクするのだった。
撮影が始まり、しばらくロケにいってしまう白城。白城の家での葵の仕事も減るが、契約はそのままにしてくれていて、週に2回、家の様子を見に行くように任されている。空気を入れ替え掃除をし、必要な郵便物が届いていたら木之下に連絡することになっていた。
ある日、郵便物の連絡をすると木之下から「白城がすねてますけど」と言われる。邪魔をしないようにと思って連絡をしていなかったけれど、白城は葵からなんの連絡もこないのが不満だったらしい。メールをすると返事が返ってきて、声が聞きたいと書いてあったから思い切って電話する。すぐに出てくれたけど電話のむこうはガヤガヤしていて、どこかで飲んでいる様子。向こうから女優の声も聞こえてきて、理由もわからずモヤモヤする葵。会話が弾まないまま電話を切った葵は、白城とは住む世界が違うことを痛感する。
そんなある日、新入社員の田中が入ってきて、葵が指導係に任命される。二人で依頼者の家をまわって、掃除の仕方などを細かく教えていく。
葵の丁寧な接客態度を見て、田中は驚き、「なぜそこまでするのか」と訊ねる。「私は何もできないから。せめて気持ちよく過ごせるようにしたい」と答えた葵に、尊敬以上のものを感じる田中。
ある日二人で仕事に行った帰り、豪雨で電車が泊まってしまう。タクシーに乗ろうにも混雑していて、仕方ないので24時間営業のファミレスに入ることにする。働き詰めでうとうとしてしまう葵。田中が話しかけたとき、寝ぼけて白城の名前を呼んでしまう。「恋人ですか?」と訊ねる田中に、「好きだけど遠い世界の人だ」と悲しそうに笑う葵。田中は「そんなに辛い人、やめた方がいいんじゃないですか」と言うが「私が一方的に好きなだけだから」と続ける葵をもどかしく思う。雨が止み帰ろうと店を出たときに、田中に手を引かれ、好きだと告白される。返事はまだいいと言われるも、どきどきしてしまう葵。
家に帰ったところで、「何かあった?」と弟・妹に指摘される。「お金とか関係なく好きなひとと幸せになってほしい」という二人の言葉に白城と田中のことを考える。
ただ白城とはあくまで「契約」上の恋人だから、これ以上深入りする前にやめた方がいいのかな、と思ったところで、予定より早く帰れることになったという連絡が白城自身から入る。
白城が帰ってくる日、夕飯に好物を作り、家で出迎える葵。
ただこの後、別の家に仕事に行かねばならない葵が出て行こうとすると、白城は葵を引き止める。「他の家行く必要ある?お金ならもっと払うけど」という白城に、お金でなんでも言うことを聞くと思われていると勘違いし、立場の違いを自覚して悲しくなってしまう葵。帰ります、というと映画の撮影の話をされる。男性の気持ちはわかったけど、女性の気持ちがわからない、と。「女性側から告白するリアリティが欲しいんだけど、どうしたらいいの?」と聞かれた葵は「ごめんなさい。私にはわかりません」と出ていってしまう。
白城は、上手く撮影が進んだロケ中のことを思い出していた。ヒロイン役の女優が上手くて、会いたくて仕方ないという表情や仕草を作り出してくれたため、いい画が撮れたと自負する一方、それらは葵からは感じたことがない感情だった。
考えてみれば、全部自分から言い出したのだから仕方ないと思う。初めて会った日に、真面目ないい子だと思った。メガネを外したら澄んだ瞳が印象的だった。
事務所の社長は白城を見つけてくれた恩人であり、誰よりも自分の作品や考えを理解してくれている。そんな社長からの「このままじゃ、まずいよ」という指摘は、白城にも思い当たる節があった。特に初めての映画監督ということもあって、確かに何かを変えなければと思っていたところだった。
葵と出会ってからの白城は、会いたい、一緒にいたい、愛しい、という気持ちを順番に知ったという実感があった。だけど葵は白城がロケに行く時も、寂しそうな様子は見せなかったし、実際連絡も来なかった。そのことが、白城には苦しかった。だがその感情の正体には、未だ気づいていない。
ロケが終わり久しぶりに家に帰って葵に会って、満たされると感じる白城。ただ「わかりません」と言って出て行った翌日、葵に「しばらく距離を置きたい」と言われる。ショックを受けたものの、表面上は誤魔化して了承する白城。それからしばらく、二人はただの雇い主と家政婦として接する。そんなある日、白城は葵が新人の田中と歩いているのを見てしまう。
慌てて二人の後を追う白城。声は聞こえないものの、二人が何かを仲良く話して別れるところまで見てしまう。
その後の予定をキャンセルして、葵が家にやってくるのを待つ白城。
不在だと伝えてあったから、家にやってきた葵は白城が待ち構えていて驚く。
田中との関係を訊ねると、葵はあっさり後輩だと伝える。その中で「彼は素直でいい子ですよ。教えたら教えただけちゃんと覚えてくれるし」と言ってしまい、白城はそれに対してイライラしてしまう。
二人は言い争いになって、結局お互いが自分をもっと特別に扱ってほしい、と思っていただけだということがわかる。
葵は「ただの練習台なのに出過ぎたこと言ってすみません」と謝罪するが、白城はとっくに本気だということを伝え、二人は無事に付き合うことになる。
ある日、上司から少し変わった家を担当するように言われる。白城昴という男性の一人暮らしの家の家事全般を請け負ってほしいと、彼のマネージャーを名乗る木之下という人物からの依頼だった。白城は高級マンションに住んでいるものの家を空けることも多く、ほとんど葵の前に姿を現さない謎の人物だった。
だがある日、家事をこなしている間に白城と木之下が帰宅し、白城が突然「それなら彼女でいいんじゃないか」と言う。
最初はその提案を却下していた木之下だが「業界人じゃない、普通の子のほうがメリットがある。それに彼女はとてもよく働いてくれている」と白城が説得し、渋々了承する。木之下は葵を呼び「とある仕事を追加で頼みたい」と言う。
彼から提示されたのは「白城に恋愛の経験を積ませるために、恋人として過ごしてほしい」という内容だった。
白城は、演劇賞を総なめにするほどの新進気鋭の演出家だった。2年ほど国費で海外に留学して帰国した。そして今回、初めて映画監督を務めることになっていた。その映画は王道ラブストーリーなのだが、白城があまりに恋愛に興味を示さないため不安に思った事務所の社長が、木之下に「白城に恋愛経験を積ませろ」という命じたのだった。
元々女優などで相手を見繕っていた木之下だったが、白城は大の女嫌いだった。そのせいで相手が美人女優であっても見向きもしない。ただ本人も社長の命令に背く気はなく、実際恋愛経験が乏しい自覚はあった。なんとかしたいと思いつつ、誰にも心惹かれない白城。「誰ならいいんだよ」と聞いた木之下に、「彼女とか」と言って指名したのが、葵だったのだ。最初木之下は地味な葵にそんな役目が務まるのかと疑問視していたが、白城が「彼女が家を掃除していても気にならない」と言ったので、葵に正式に恋人役を依頼することにした。
会社を通さずに、今の給料の倍支払う、という条件を提示され、葵は即決する。
もうすぐ弟は大学を卒業するが奨学金の返済があるし、妹が気を遣って大学に行くのを躊躇っているから、今よりお金がもらえるのであれば悩んでいる理由がなかった。
そうして契約を結んだ二人は、普通の恋人同士のようにメッセージでやりとりをしたり、会えない日は電話を掛け合って連絡を取るようになる。最初のうちは全然会話が続かなかった二人だが、白城の家で顔を合わせるたびにメッセージの真意を説明したり、電話では上手く伝えられなかったことを話すうちに、少しずつ距離が縮まっていく。
女嫌いと言っていた白城は、たまに甘い言葉も囁いて揶揄うこともあり、葵は「本当に女嫌いなんだろうか」と疑問に思う。
ある日、葵の休日と白城のオフが重なり、二人で出かけることにする。
白城が新調したいと言っていたソファカバーを買いにインテリアショップにいった二人。ソファの座り比べをしてみたり、マットレスを確認したり、テーブルの大きさについて話し合ったり、まるでこれから同棲するカップルみたいな話をしていると、店員さんにも新婚夫婦扱いされ、葵はひとりドキドキしてしまう。
無事に買い物を終え食事をして帰ろうかと話していると、白城に声をかける女性が現れる。
朝野友香と名乗るその女性は、白城を慣れ慣れしく「昴」と呼び、葵に値踏みするような視線を向ける。葵が気まずく思っていると、友香は白城を食事に誘う。ただ異様なほど冷たく断った白城に対し、友香は「演劇のことしか考えてないあんたなんて、男としての魅力が全く感じられない」と捨て台詞を残して立ち去っていく。妙な空気になってしまい、葵は今日は帰りましょうと提案する。
家に帰ってもどこか暗い白城に夕飯を作る葵。これは家事代行の仕事だから、と白城の分だけ盛り付けていると、話があるから一緒に食べようと誘われる。友香と付き合っていたこと、浮気をされた挙句、他の男に「白城は面白みがない」と話しているのを聞いてしまって、それ以来恋愛をする気にならない、と言う白城。自分にやっぱり恋愛は無理かもな、という白城の話を聞いて、思わず泣き出す葵。白城がうまく付き合えないことを謝ると、葵はそんなことで泣いているんじゃない、白城が可哀想だ、と言う。浮気されたら辛い。そんなふうに言われたら辛い、それなのに、自分がそんな人間だから、なんて言わないでほしいと訴える葵。
白城はそんな葵に、実は最近友香から連絡がきていて、どうしようかと悩んでいたと打ち明ける。賞を取って名前を見かけたから連絡してきたんだろうということは予想してたけど、今日葵と一緒にいたところで会って、はっきりわかって良かった、という白城。
それに葵の料理が美味しいから、こっちの方がご馳走だという白城に、葵はまたひとつ彼が本当に気になってしまうことを自覚するのだった。
白城のもとに完成した台本が届き、とうとう映画の撮影開始が近づく。台本を見ながらアイディアをまとめたり打ち合わせをする時間が必要になり、二人はあまり一緒にいられない。
「恋人っぽいことしなくて大丈夫ですか……?」という葵に、白城はソファに座るように促し、その上に膝枕の体勢で寝転がる。そのままの体勢で白城は台本を読んでいたが気づけば寝ている。葵は頭をそっと撫でて、頬を触る。唇を撫でて、それから自分の唇を指で触れる。葵が我に返った瞬間、白城が眼を覚ます。
真っ赤な顔で自分を見下ろす葵に、どきっとする白城。二人は微妙にギクシャクするのだった。
撮影が始まり、しばらくロケにいってしまう白城。白城の家での葵の仕事も減るが、契約はそのままにしてくれていて、週に2回、家の様子を見に行くように任されている。空気を入れ替え掃除をし、必要な郵便物が届いていたら木之下に連絡することになっていた。
ある日、郵便物の連絡をすると木之下から「白城がすねてますけど」と言われる。邪魔をしないようにと思って連絡をしていなかったけれど、白城は葵からなんの連絡もこないのが不満だったらしい。メールをすると返事が返ってきて、声が聞きたいと書いてあったから思い切って電話する。すぐに出てくれたけど電話のむこうはガヤガヤしていて、どこかで飲んでいる様子。向こうから女優の声も聞こえてきて、理由もわからずモヤモヤする葵。会話が弾まないまま電話を切った葵は、白城とは住む世界が違うことを痛感する。
そんなある日、新入社員の田中が入ってきて、葵が指導係に任命される。二人で依頼者の家をまわって、掃除の仕方などを細かく教えていく。
葵の丁寧な接客態度を見て、田中は驚き、「なぜそこまでするのか」と訊ねる。「私は何もできないから。せめて気持ちよく過ごせるようにしたい」と答えた葵に、尊敬以上のものを感じる田中。
ある日二人で仕事に行った帰り、豪雨で電車が泊まってしまう。タクシーに乗ろうにも混雑していて、仕方ないので24時間営業のファミレスに入ることにする。働き詰めでうとうとしてしまう葵。田中が話しかけたとき、寝ぼけて白城の名前を呼んでしまう。「恋人ですか?」と訊ねる田中に、「好きだけど遠い世界の人だ」と悲しそうに笑う葵。田中は「そんなに辛い人、やめた方がいいんじゃないですか」と言うが「私が一方的に好きなだけだから」と続ける葵をもどかしく思う。雨が止み帰ろうと店を出たときに、田中に手を引かれ、好きだと告白される。返事はまだいいと言われるも、どきどきしてしまう葵。
家に帰ったところで、「何かあった?」と弟・妹に指摘される。「お金とか関係なく好きなひとと幸せになってほしい」という二人の言葉に白城と田中のことを考える。
ただ白城とはあくまで「契約」上の恋人だから、これ以上深入りする前にやめた方がいいのかな、と思ったところで、予定より早く帰れることになったという連絡が白城自身から入る。
白城が帰ってくる日、夕飯に好物を作り、家で出迎える葵。
ただこの後、別の家に仕事に行かねばならない葵が出て行こうとすると、白城は葵を引き止める。「他の家行く必要ある?お金ならもっと払うけど」という白城に、お金でなんでも言うことを聞くと思われていると勘違いし、立場の違いを自覚して悲しくなってしまう葵。帰ります、というと映画の撮影の話をされる。男性の気持ちはわかったけど、女性の気持ちがわからない、と。「女性側から告白するリアリティが欲しいんだけど、どうしたらいいの?」と聞かれた葵は「ごめんなさい。私にはわかりません」と出ていってしまう。
白城は、上手く撮影が進んだロケ中のことを思い出していた。ヒロイン役の女優が上手くて、会いたくて仕方ないという表情や仕草を作り出してくれたため、いい画が撮れたと自負する一方、それらは葵からは感じたことがない感情だった。
考えてみれば、全部自分から言い出したのだから仕方ないと思う。初めて会った日に、真面目ないい子だと思った。メガネを外したら澄んだ瞳が印象的だった。
事務所の社長は白城を見つけてくれた恩人であり、誰よりも自分の作品や考えを理解してくれている。そんな社長からの「このままじゃ、まずいよ」という指摘は、白城にも思い当たる節があった。特に初めての映画監督ということもあって、確かに何かを変えなければと思っていたところだった。
葵と出会ってからの白城は、会いたい、一緒にいたい、愛しい、という気持ちを順番に知ったという実感があった。だけど葵は白城がロケに行く時も、寂しそうな様子は見せなかったし、実際連絡も来なかった。そのことが、白城には苦しかった。だがその感情の正体には、未だ気づいていない。
ロケが終わり久しぶりに家に帰って葵に会って、満たされると感じる白城。ただ「わかりません」と言って出て行った翌日、葵に「しばらく距離を置きたい」と言われる。ショックを受けたものの、表面上は誤魔化して了承する白城。それからしばらく、二人はただの雇い主と家政婦として接する。そんなある日、白城は葵が新人の田中と歩いているのを見てしまう。
慌てて二人の後を追う白城。声は聞こえないものの、二人が何かを仲良く話して別れるところまで見てしまう。
その後の予定をキャンセルして、葵が家にやってくるのを待つ白城。
不在だと伝えてあったから、家にやってきた葵は白城が待ち構えていて驚く。
田中との関係を訊ねると、葵はあっさり後輩だと伝える。その中で「彼は素直でいい子ですよ。教えたら教えただけちゃんと覚えてくれるし」と言ってしまい、白城はそれに対してイライラしてしまう。
二人は言い争いになって、結局お互いが自分をもっと特別に扱ってほしい、と思っていただけだということがわかる。
葵は「ただの練習台なのに出過ぎたこと言ってすみません」と謝罪するが、白城はとっくに本気だということを伝え、二人は無事に付き合うことになる。


