人気バンドの紅一点?!~天然美女は溺愛される~

緑蘭

「う~・・・っ、楽しみだね!」
「あはは、落ち着きなよユキ」
「コウもさっきからウズウズしてるじゃん」
「まぁ・・・ね、そうなるよね」
私が自分で自分を抱きしめていると、コウが苦笑しながら言ってくる。
そんなコウも深呼吸してはキョロキョロしているので、同じだろう。
なにせ、今日は新曲のリリース日!
リリースの30分前から、ライブ配信をすることになっている。
どれだけの人が見に来てくれるかわからないけど、検索のトレンドランキングには上位に食い込んでいる。
ルアーズの中でも見れない人もいるだろうし・・・。
「ネイとセイも楽しみだよね!」
さっきから黙っている2人に声をかけながら振り向く。
すると、2人はイヤホンをつけたまま目をつむっていた。
寝ている・・・わけではなさそう。
ってことは曲でも聴いてるのかな?
2人そろって何を聴いてるんだろう・・・?
不思議に思いながら2人のスマホをのぞき込むと。
「・・・あぁ、そういうことかぁ」
2人とも、ARTEMISの新曲を聴いていた。
なるほど・・・だからずっと黙ってたのかぁ・・・、・・・15分くらい前から。
この新曲は難易度が高いぶん完成度も高く、自分たちでも大満足の曲になっている。
その新曲に期待してくれているファンもいっぱいいるだろうから、失望だけはさせないようにしないと・・・!
「あんまり気負ったらダメだよ、ユキ?」
コウに顔を覗き込まれ、私はその一言で自分が緊張していることに気づいた。
あれ・・・いつもはリハーサルで緊張して、本番は開き直って緊張なんてしないタイプなのに・・・。
「大丈夫、心配しなくてもすごくいい曲ができたから。僕とユキの力作だよ?」
コウが明るい笑顔でそう言い切って肩を抱いてくる。
「ん・・・大丈夫!1人だったら今頃泣いてたかもしれないけどみんないるし!」
「そうそう、一回みんなに失敗談でも話したら緊張なんて解れるよ」
「え、それって私の失敗談を話すってコト?」
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