離婚を前提にお付き合いしてください ~私を溺愛するハイスぺ夫は偽りの愛妻家でした~
***

「美鈴。リボンがほどけてる」
「へ?」

 食器を片づけているところに突然背後から声をかけられ、なかなか間抜けな声が漏れた。

 美鈴は一拍置いてから千博の言葉の意味を理解し、首の後ろに手を回す。今着ているシャツの首裏のところにリボンがついているから、おそらくはそれがほどけていると言っているのだろう。

 実際、リボンがあると思われるところに手を伸ばしたら、そこにリボンはなくただの紐がぶら下がっている状態だった。ツルツルとして滑りやすい生地だから、何かの拍子にほどけたのだろう。

「本当だ……ありがとう、教えてくれて」

 ほどけたとして肌が見えるようなデザインではないが、さすがにこのままというわけにはいかない。とはいえ、鏡がないと一人で背中側のリボンをきれいに結ぶことは難しい。後で姿見の前で結び直すのがいいだろう。

 美鈴はこの場で結ぶことは諦め、食器の片づけに戻る。しかし、それはすぐに中断させられてしまった。
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