離婚を前提にお付き合いしてください ~私を溺愛するハイスぺ夫は偽りの愛妻家でした~
 何も言わずにじっと見つめてくるから、こちらはそわそわとしてしまう。美鈴がどれだけ落ち着かなくなっても、瞳の奥を探るような真っ直ぐな視線は一向に外されない。

 美鈴はまた始まってしまったと心の中で思った。

 なにしろ千博のこの不可解な行動は今に始まったことではない。ここ一ヶ月くらい続いているのだ。

 しかも、何をきっかけにそうなるのかがわからない。大体は会話をしている途中で急に見つめられ始める。そして、美鈴が声をかけないかぎり、ずっと続くのだ。

 すでに何度も同じ目に合っているとはいえ、この状態に慣れることもなく、美鈴はいつもそわそわとしてしまう。

 今日も落ち着かない気持ちになりながらも、千博を現実へ引き戻すようにそっと声をかける。

「……千博さん?」

 はっとしたように千博が我に返る。

「……そろそろ行ってくる」
「あ、うん。いってらっしゃい」

 あんなにも見つめてきたのに、あっさりと去っていく千博。彼の行動の意味が美鈴にはさっぱりわからなかった。

「はあ……探らないって決めたのに……」

 千博のことを探りたくなくても、こんなことをされれば、どうしても彼の真意を探りたくなる。どんな気持ちで見つめてくるのだろうと。

 美鈴は毎度心を乱され、困り果てている。
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