離婚を前提にお付き合いしてください ~私を溺愛するハイスぺ夫は偽りの愛妻家でした~
 映画館に到着し、食事も軽く済ませた二人は、塩味のポップコーンとウーロン茶とコーヒーと共にシアター内の座席に座る。

 当然ながら二人の手はもう繋がれていない。

 車を降りた直後は、また握られるのではないかと思ってドキドキとしていたが、結局千博がもう一度手を繋いでくることはなかった。

 しばらくは気になって落ち着かなかった美鈴も、今は平常心を取り戻している。

 上映前の時間は特に会話はせず、スクリーンで流されているCMに目を向ける。二人の関係が変わったからそうしているというわけではなく、これが元々の美鈴と千博のスタイルだ。

 もちろん上映中もこそこそ話したりはしない。それぞれスクリーンに集中する。

 特に今回の映画は迫力のある大自然の姿を高画質のカメラで間近から撮影した映像だから、自然とスクリーンに引き込まれる。

 人間など到底太刀打ちできないような激流の川に、険しい渓谷。深い深い海の底や鬱蒼とした森の奥。そんな場所にもたくさんの命が息づいていて、地球は本当に広いのだなと実感する。

 スクリーンいっぱいの大迫力の映像に、ここ最近の悩ましい出来事たちはすっかり鳴りを潜めていた。
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