離婚を前提にお付き合いしてください ~私を溺愛するハイスぺ夫は偽りの愛妻家でした~
「すみません、驚きましたよね。でも、それは私が言っていなかったせいですから。指輪もしていませんしね」

 塾に行くときは、必ず結婚指輪を外している。そのくらい、同僚に結婚していることが知られないよう、美鈴は十分に気を配っている。だから、磯崎が驚くのも本当に無理はないのだ。

「確かにとても驚きましたけど……」
「そうですよね。でも、驚いたくらいで不快にはなりませんよ。だから、心配なさらないでください。むしろ、驚かせてしまって、すみません」
「いえ、桑原先生は悪くありませんから。それに驚いたことは確かですが、私が心配しているのはそういうことではありません」

 まさかの解釈間違いに、美鈴はまた最初の疑問に戻る。驚いたことに対して言っているのでないなら、いったい何のことを言っているのだろうか。

 あのときの磯崎の態度におかしなところはなかったと思う。

 もう一度首を傾げる美鈴に、磯崎は少し躊躇ってから答えてくれる。
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