離婚を前提にお付き合いしてください ~私を溺愛するハイスぺ夫は偽りの愛妻家でした~
「……私の『こうい』が透けて見えてしまったのではないかと心配になりまして」
「『こうい』?」

 その言葉を頭の中で漢字に変換しようとするも、素早く変換できない。どうして日本語はこうも同音異義語が多いのだろうか。

 普通であれば会話のニュアンスから正解を導き出せるが、今回はぴたりとくる漢字が思い当たらない。最初に思いついたのは『行為』だが、透けて見えるという言葉とはマッチしないだろう。

 大きく首を傾げる美鈴に、磯崎はもう一度その言葉を言い直す。

「はい。私の桑原先生への『こうい』が」

 はっとする。今の言い方で一つの漢字が美鈴の脳内に浮かび上がっている。

「えっ……その『こうい』というのは――」
「書いて字のごとく好きな気持ちです」

 間違いない。『好意』のことを言っている。予想もしていなかった展開に、美鈴はひどく焦り、またわずかな緊張を覚える。

 磯崎が自分をそういう対象で見ているとは露ほども思っていなかったから、突然の告白にどう対処すればいいのかわからない。

 それに、ストーカー被害以降、千博以外からのそういう感情に嫌悪感を抱くようになっていたから、余計に返す言葉が見つからなかった。ただただ何の意味もなさない言葉しか出てこない。
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