離婚を前提にお付き合いしてください ~私を溺愛するハイスぺ夫は偽りの愛妻家でした~
「それは……考え方の違いみたいなものかな。どうしても相容れないことがあって、一緒にはいられないと思ったから」
「……どういうこと?」
「ごめん。これ以上は言えない」

 冷たい言い方をしているようで心苦しい。それでも言わないと決めている以上は、はっきりとその気持ちを告げるしかなかった。

 洋子は心配そうにこちらを見つめてきたものの、すぐにしかたないという顔をして美鈴の言葉を受け入れてくれる。

「……そう。わかった。二人にしかわからない問題もあるものね。美鈴が言いたくないなら、私も訊かない」
「ありがとう。ごめんね、話せなくて」
「ううん。美鈴が一人で抱え込んでるんじゃないなら、別にいいよ。でも、美鈴はいいの? 離婚は納得した答えなわけ? あんなに相馬さんのこと好きだったじゃない」

 想い合っていたはずのあの頃を思い出して切なくなる。とてもとても千博が好きだった。深く愛していた。

 でも、それは美鈴だけ。

 偽りの愛を望んでいない以上、二人の道は絶対に重ならない。

 そう頭で理解している。理屈としてはちゃんと納得しているのだ。心が納得できているかはまた別だが、それはもう時間をかけて納得させていくしかない。

「うん……そうね。それはそうなんだけど、その気持ちだけではどうにもならないことだから。ちゃんと納得はしてるから大丈夫」
「そう……まあ、美鈴が納得してるのなら、もうこれ以上は言わない。言いづらいこと教えてくれてありがとうね」

 小さく「うん」と頷くと、洋子がきゅっと抱きしめてきた。

 いくら納得しているといっても、傷ついていることはわかったのだろう。美鈴を慰めるように優しく抱きしめてくれる。

 美鈴はしばらくの間、洋子に身を預けて温もりを味わう。人の体温というのはどうしてこうも心地いいのだろうか。傷ついていた心が癒されていく。

 つらいときにこうして寄り添ってくれる人がいることは本当にありがたいことだ。
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