離婚を前提にお付き合いしてください ~私を溺愛するハイスぺ夫は偽りの愛妻家でした~
「あの、美鈴さんですよね?」

 向かいから声をかけてきたのは、小柄で目のぱっちりとしたとてもかわいらしい女性。美鈴の名をはっきりと口にしたが、その女性に見覚えはない。

「……えーと」

 本人だと認めていいものか迷っていると、その戸惑いを察したのか目の前の女性が名乗り始める。

「私、相馬さんの同僚で宮下と言います。相馬さんのことで大事なお話があるんですが、少しお時間よろしいですか?」

 まさか『相馬』の名が出るとは思わずドキリとする。この場合の相馬は千博のことを指しているだろう。千博に関する話とはいったい何だろうか。宮下というこの女性がわざわざこんなところまで美鈴を訪ねてきたことに不安を覚える。

 おそらく面識はないと思うが、果たしてこの女性と相対しても大丈夫なのだろうか。そうは思っても、千博のことでと言われると断りづらい。彼に何かあったのではないかという不安もある。

 結局、美鈴は迷いながらも頷くしかなかった。

「……わかりました」

 磯崎にはこの場で別れを告げる。

「はる先生、すみません。今日はここで」
「はい。では、また明日」

 去っていく磯崎を軽く見送り、美鈴は宮下に向き直った。
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