離婚を前提にお付き合いしてください ~私を溺愛するハイスぺ夫は偽りの愛妻家でした~
 千博との愛を失っていることに対する切なさ。千博が自分以外の誰かのもとへ行ってしまうという深い悲しみ。千博との時間に踏み入られることへの怒り。

 そして、宮下に対する大きな嫉妬が美鈴の内側で荒れ狂っている。

 どれだけ早く別れるように懇願されても美鈴は応えられない。絶対に譲れない。あとたったの半月なのだ。それだけの時間は千博のそばにあることを許されたい。

 美鈴はたくさんの感情を抑えながら、はっきりと宮下に告げる。

「だから、それは私と千博さんで決めることです。あなたは関係ありません!」

 思わず語気を強めて言えば、宮下は両腕で己を抱きしめ、身を守るような素振りを見せる。

「わー、怖い。相馬さんがかわいそう。こんなヒステリックな人がそばにいるなんて」

 少しも怖いとは思っていないようなその表情と声音に苛立ちが募る。

「……失礼します」

 これ以上、この人の前にいては自分がおかしくなってしまいそうで、もうこの場にはいられなかった。美鈴は自分の分の代金をテーブルに置くと、その場に立ち上がる。

 しかし、すぐに宮下に引き留められた。
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