離婚を前提にお付き合いしてください ~私を溺愛するハイスぺ夫は偽りの愛妻家でした~
「待ってください。お渡ししたいものがあるんです。どうぞ」

 宮下はなにやらきれいに包装されたものを美鈴の前にすっと差し出してくる。

 だが、贈り物にしか見えないそれを、彼女から渡される覚えはない。すぐに宮下の方へと押し返す。

「……結構です」
「確認もせずにいいんですか? 中身くらい見たらどうです?」

 もう一度美鈴の方へ差し出される。宮下の言葉に不安がよぎる。

 千博に関する重大な何かが入っているのではないか。そんなふうに思わされて、美鈴は恐る恐る包装を解く。

 しかし、中から出てきたのは一枚のハンカチだった。

「とてもお似合いだと思いますよ。餞別の品として私が選びました。相馬さんのことは私に任せて、どうぞ早くお別れになってください」

 瞬時にそれが『別れ』を意味したものだと察する。ハンカチは漢字で『手巾(しゅきん)』と書き、これが『てぎれ』とも読めることから、別れを連想させるものだと言われている。

 おそらくは早く別れろという意味でわざわざこれを用意したのだろう。

 ひどくコケにされているのだとわかって、美鈴はもはや怒りを抑えることもできず、勢いよくそれを突き返した。

「結構です! 失礼します」

 美鈴は今度こそその場を立ち去った。
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