離婚を前提にお付き合いしてください ~私を溺愛するハイスぺ夫は偽りの愛妻家でした~
「それはルール違反よ! あんまりじゃないっ! 二人で馬鹿にしてるの?」
「は? 何を言っているんだ」
「あと三日……たった三日じゃない……それまではちゃんと私と向き合っていてよっ!」

 千博の胸をこぶしでドンと叩く。腹立たしくて、虚しくて、悲しくて、美鈴の手は止まらない。右手で何度も千博の胸を打ち続ける。

 残されたわずかな時間をささやかに過ごしたいだけなのに、どうしてこうも追い詰められなければならないのだろうか。千博なら美鈴の願いをちゃんと最後まで聞き入れてくれると思っていたのに、これではあんまりだ。

 美鈴の瞳に涙が浮かんでいく。

 千博はなおも叩き続ける美鈴の腕をパシッと掴み、美鈴の顔を覗き込んでくる。

「美鈴? 落ち着いてくれ」

 冷静に諭そうとするところにさえ苛立つ。美鈴はこんなにも苦しめられているのに、千博にとっては取るに足らないことなのかと。
 美鈴の心も体ももはや制御不能に陥り、瞳からは涙が、口からは言葉が次から次にこぼれ出す。

「愛してくれとも、離婚しないでくれとも言ってないじゃない。ちゃんと……ちゃんと三日後には別れるから、それまでは私との時間を蔑ろにしないでっ。ほかの人の存在をこの家に持ち込まないでよっ!」
「……ほかの人の存在って――」
「そんなに早く私と別れて、あの子と一緒になりたい? 三日も待てないほど?」
「待ってくれ。あの子って、宮下さんのことを言っているのか? まさか彼女と会ったのか?」

 宮下と会ったことを責め立てるような言い方に、美鈴は絶望を味わう。美鈴には最低な贈り物を見せつけておいて、宮下のことは大事に守ろうというのか。

 美鈴だけが悪者になっていて、とても悔しくて悲しい。
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