離婚を前提にお付き合いしてください ~私を溺愛するハイスぺ夫は偽りの愛妻家でした~
「いよいよ明日だね」
「うん」
「半年間会わずに過ごしていたはずなのに、これからのたったの三ヶ月がとても長い時間に思える。君と心が通い合った今、一日たりとも離れたくないと思ってしまうんだ。どうやら僕は欲張りになってしまったらしい。君への想いが溢れて止まらないんだ」

 互いに顔だけを向け合えば、視線が絡み合う。千博の顔には寂しさが現れていて、美鈴も同じ気持ちを掻き立てられる。

「私もよ。千博さんと離れるのはとても寂しい。もっとそばにいたい……でもね、私も欲張りだから、千博さんへの想いは持ったまま、向こうで頑張ってこようと思う。だって、千博さんは待っていてくれるんでしょう?」

 千博がふわりと優しく微笑む。

「待っているよ、いつまでも。だから、全力で楽しんでおいで。今回の留学にかぎらず、美鈴には自由に羽ばたいてほしい。僕は君に退職を勧めたことを後悔しているんだ。だから、もう君を僕に縛りつけて、狭い空間に閉じ込めはしない。好きなことをして、笑っていてほしい。君の笑顔が好きだから」

 初めて知らされる後悔に、千博の優しさを改めて感じる。やはり千博は千博なのだと強く思った。

 そんな彼に美鈴も美鈴なのだと教えたい。千博ならば、美鈴が流されるだけの人間ではないとわかっているはずだから。

「ありがとう、千博さん。でも、一つ間違ってる。私は千博さんに縛られていたことなんてないもの。全部私が選んできたの。千博さんと交際したのも、結婚したのも、仕事を辞めたのも、全部私の意思。千博さんに言われて流されたわけじゃない。私がそうしたいと思ったの」

 少しだけ目を丸くした千博はすぐにその目を細めて笑いをこぼす。
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