離婚を前提にお付き合いしてください ~私を溺愛するハイスぺ夫は偽りの愛妻家でした~
「ははっ、美鈴は本当に強いな。こんなに強くて真っ直ぐな人はほかに知らないよ。本来、『したたかな人』というのは君のような人のことを指すのかもしれないな。『強い』という字が表すように、ずる賢いのではなく、芯の強い美鈴のような人のことを」

 芯が強いなどと言われると少し恥ずかしい。どちらかといえば強い自覚はあるが、はっきり言われるほどではないと思っている。

「……そんなに強くはないと思うけど」
「いや、僕なんかよりもずっと強い。君は心が豊かだからね。でも、『したたか』だと少し強さのイメージは違うかもしれないな。決して屈しない強さというよりも、周囲の力を自分の力に変えてしまうようなしなやかな強さだ」

 褒められて照れくさいものの、千博の言葉は妙に腑に落ちた。美鈴がいつも前を向いていられるのは、たくさんの人に支えられているからだ。

 そばで支えてくれる人がいてこそ、美鈴は強くいられる。

「それなら、私が強くいられるのは、きっと千博さんが力を分け与えてくれるおかげね。つらいときにずっと寄り添っていてくれたもの」

 どうしようもなくつらかったあのときに一番寄り添ってくれたのは千博だった。千博がいなければ、心が壊れていてもおかしくなかった。

 あの頃の千博は演じてそうしていたのかもしれないが、それでも美鈴が千博に救われたことは事実だ。
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