離婚を前提にお付き合いしてください ~私を溺愛するハイスぺ夫は偽りの愛妻家でした~
 治まらない動悸に顔をしかめて耐えていれば、美鈴を複雑な思いにさせる言葉が続けて襲ってくる。

『僕の仕事に理解があって、煩わしいことは言わない。家のこともしっかりとやってくれる。英語が堪能だから、海外に行くことになっても彼女なら問題ない。なにより美鈴はコミュニケーション能力が高くて、人に好感を持たれやすいからな。どこに連れていったとしても彼女なら上手くやってくれるだろう。まさしく僕にとって理想の妻だろ?』

 評価されているはずなのに、これほど悲しい気持ちになるのはどうしてだろう。まるで打算で選ばれたかのようでちっとも嬉しくない。

 これまでに似たようなことを千博から言われたことはあると思うが、そのときはもっと美鈴の内面を見てくれているような言い方だったから素直に受け取れた。自分という人間を認めてくれているのだと。

 けれど、今は千博にとって便利な存在と言われているようにしか聞こえない。

 前後不覚になりそうなほど深い悲しみに襲われるが、そこはまだ悲しみの底ではないらしい。

 続いて放たれた決定的な言葉がさらなる悲しみの奥底へと美鈴を突き落とす。
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