離婚を前提にお付き合いしてください ~私を溺愛するハイスぺ夫は偽りの愛妻家でした~

3. 募る切なさに

 千博に真実を確認できないまま一週間が過ぎた。

 千博は相変わらず美鈴を大切にしてくれるし、毎日愛を伝えてくれる。それはこれまでの千博と何ら変わりないのに、美鈴の心の中だけはすっかり変わってしまった。

 どんなに優しくされても、どんなに愛を囁かれても、その裏にある本音は何かと探ってしまう。優しくされればされるほど、不安は大きくなって、美鈴を苛んでいく。

 全部吐き出せてしまえたら楽になれるのにとも思うが、二人の関係を壊す恐怖の方が大きくて少しもその話題を口にできない。苦しい胸の内をひた隠して、いつもの自分を演じてしまう。

 美鈴までもがこの関係を演じているとは、なんと滑稽なことだろう。ひどく愚かで馬鹿げていると思う。それでも千博を失うかもしれない恐怖に打ち勝つことは難しくて、美鈴にはそうすること以外できなかった。

 そうして不安だけが膨れ上がり、抱えきれなくなった美鈴の口からとうとう核心に迫るような問いがこぼれ落ちる。
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