離婚を前提にお付き合いしてください ~私を溺愛するハイスぺ夫は偽りの愛妻家でした~
「……ねえ、千博さんはどうして私のことを好きになってくれたの?」

 思わず口をついて出た言葉に自分自身がはっとする。取り消そうにも一度表へ出してしまった言葉は戻せない。

 あのとき聞いてしまったようなことを言われるのではないかと心臓が嫌な鼓動を立てる。千博が何か言う前にどうにか誤魔化せないかと一人慌てる美鈴を前に、千博は特に困った様子もなく話し始める。

「どうして、か。僕の中の答えとしては、それが美鈴だったから、なんだけど、美鈴の求めている答えはそういうことではないね」

 いまいちピンとこない答えに美鈴は戸惑う。

 言っていることはよくわからないが、もうそれで十分だと言ってしまおうか。余計なことを聞いてしまう前にこの話を終わらせた方がいい。

 そんなふうに思うが、千博は本格的にその話をするつもりらしく、美鈴を自分の隣に呼び寄せる。リビングテーブルに着いている美鈴に向かって『ここにおいで』と言いながら、ソファーの座面を軽く叩いている。

 この状態で話を終わらせるのはあまりに自分勝手ではないだろうか。そんな思いに駆られ、美鈴は迷いながらも千博の隣に腰を下ろした。

 すぐに千博の腕が肩に回って、優しく引き寄せられる。そうして触れ合った状態で、千博は静かに語り始めた。
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